津波被害の杉、幼稚園舎に


朝日新聞
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南三陸町志津川地区の高台で、
東日本大震災の津波で枯れかけたスギ150本を使った
建設工事が進んでいる。
津波で流された町唯一の幼稚園の
私立あさひ幼稚園(園児数51人)の仮園舎だ。
スギを急いで伐採し、乾かして塩分を抜くことで、
腐食を食い止められた。

建設中の仮園舎には、太さ60センチもある
スギの柱が16本も並ぶ。
最高樹齢は350年にもなり、幼稚園を運営する
大雄寺の参道に立ち並んでいたスギだ。
津波で海水が流れ込んだため、
昨夏ごろには葉っぱが赤みがかり、
立ち枯れの症状が出始めた。

園長で住職の小島孝尋さん(52)は
「このままでは数カ月で倒れる。何とか活用できないか」と思い、
再建計画を担った建築家の手塚貴晴さんに相談。
手塚さんは、大型の木造建築を専門とする
石川県能美市の建設会社「中東(ちゅう・とう)」を頼った。

塩害で枯れかけた木を製材するのは、中東にとっても初めて。
まずは塩分を含む土からスギを引き離そうと、
試しに数本を切ってみると、腐食は止まった。
その後、スギを乾かすことで塩分を水分と一緒に葉に集め、
ある程度は「塩抜き」ができたという。強度試験もクリアできた。

中東は、昨年11~12月に150本を伐採して
寺で1カ月半ほど乾かし、石川県の工場で製材した。
宮越久志常務は「あのタイミングを逃していたら、
製材できなかった。今後も技術を応用できる」と胸を張る。

建設現場の高台は被災者の集団移転候補地にあり、
園舎のコンセプトは「木のぬくもりがある
京都・清水寺のような建物」。
サッカー日本代表の長谷部誠選手が約1億円を寄付して、
建設を支援してくれた。
土地が狭いため、仮園舎として10年ほど使った後は、
住民も使えるホールとして再利用する計画だ。

あさひ幼稚園は現在、近くの公民館を借りて運営しているが、
7月末には仮園舎が完成する。
小島住職は「参道のスギを使ってくれて、
これほど立派な建物が出来るとは。
園舎で子供たちが元気に駆け回る姿を早く見たい」
と喜んでいる。(伊藤喜之)
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