経営者として分析、保護者は特色のない保育園・こども園には興味ナシ!?


cyzo woman
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先日、民主党が、幼稚園と保育所を一体化した
「総合こども園(※1)」の構想を断念し、
現行の認定こども園を拡充させる方針を固めました。
今回は前回に続き、読者からの質問で多かった
「保育園経営者として、行政に思うこと」について
書いてみたいと思います。

今まで何度も書きましたが、「駒沢の森こども園」は
単に子どもを預かるだけの保育園ではありません。
体と心と頭を鍛えることを教育理念としているので、
託児だけを目的として入園してくる保護者は
ほとんどいないのが現状です。
そのためか、自然と富裕層向き保育園に位置づけられています。
行政に対する個人的な意見は別として、
経営者として結論から言うと、
行政が待機児童解消のためのこども園を作ろうと、
金持ちはそういったところに子どもを入れないので、
今までと何も変わらないと思うんですよ。
そうなると富裕層向きに特化した「駒沢の森こども園」は
安泰といったところです。

私なりに分析すると、金持ちは小学校受験を
視野に入れているので、
有名私立幼稚園しか幼稚園と認めていません。
共働きの富裕層も、お受験教室の伸芽会がやっている保育園
「伸芽'Sクラブ」や「キッズワールド」のような
英語教育に力を入れているところ、
うちのような「毎日が習いごと」などの特色がある保育園
(いずれも認可外保育園※2)に
子どもを通わせているのではないでしょうか。

最近多いのが、他園からの転園希望者です。
「現在認可に通っているが、
在園児童があふれるように多く、
きちんと目が届いているか心配」
「気取ってインターナショナル保育園に通ってみたが、
弁当持参のため負担になってきた」など、
理由はさまざまなんですけどね。
「認可に入れてよかった」と普通は思うのですが、
いざ預けてみたら不満があるみたいです。
駒沢の森こども園は、区立、認可、認証に
入れなかった人の受け皿的な認可外保育園ではなく、
あえて通わせたい保育園になってきているのかもしれませんね。
これが、新しい保育園のスタイルかと。
駒沢の森こども園ブランドが確立してきたなと、
密かに喜んでいるところです(笑)。

そしてまた、1~2歳からうちの保育園に通っている子どもは、
幼稚園に上がってもアフタースクールのように
通い続けているんですよ。
保護者からすると、今まで保育園に通っていてラクできたのに、
幼稚園になった途端、保育時間が短くなって
親の時間がなくなるわけですからね保育園に慣れた親は、
長い夏休みなんて間が持つはずがありません(笑)。
インターナショナルスクールも同様、
幼稚園というところはとにかく休みが長いです。
だから、一度うちに入園したお子様は、
なかなか辞めていかないスパイラルに
入ることになるわけですね、はい(笑)。

個人的な意見は、新たにこども園を作るのは問題ないけど、
既存の幼稚園をこども園にするのは、
かなり無理なことだと思います。
幼稚園には園内調理施設がありませんし、
沐浴するスペースも作っていません。
夏休み期間中に園庭を壊して増改築するなど、
かなり大変だと思います。

ハード面だけを考えると、
保育園をこども園に変えるほうがラクですが、
保育士と幼稚園教諭、両方の人材が必要になってきます。
幼稚園教諭は「学び」を教えるための人。
ですが、0歳の泣きじゃくる赤ちゃんを目の前にして、
適切な対応ができるかどうかは不明ですよね。
普通幼稚園は1時半くらいの降園ですが、
保育園は通常17時以降の降園となります。
「こども園」になると、子どもたちの体力を見極め、
長時間の預かりに耐えられる
体力を残しておかないといけません。
そういった仕事内容の点から考えると、
保育士と幼稚園教諭は似て非なるものだと思います。
幼稚園教諭免許と保育士資格の両方を持っていて、
どちらも得意なら話は別ですが、
「こども園」として機能させるためには、
幼稚園教諭と保育士をバランスよく配置することが
重要になり、現実問題として
かなりハードルが高いのでは? と思います。

よく「保育所不足」「待機児童が○区は数百人」などと
言われていて「保育園が足りない!」と思われがちですが、
認可外保育園を入れると、実際は保育園余りなんですよ。
東京都では毎年たくさんの認可外保育園が開設される一方、
そのほとんどは1年持たずに閉園されているんです。
最短のケースでは2カ月で潰れてしまったのだとか。

待機児童が多い場所だからといって、
安易に開園しても園児が集まるとは限りません。
また、保育料を安くしても、園児が集まるとは限りません。
例えば、駒沢の森こども園のある地域で保育料を安くすると、
「食べ物は大丈夫か?」「キャリアのある先生はいるの?」などと
深読みされ、失敗するような気がしますね(笑)。

認可外は保育料が自由設定できるので、
うちのように「習いごとつき」にすることも可能ですし、
託児所としてたくさん子どもを詰め込んで
保育料を安くすることも可能です。
保育園というのは、営業する地域に住む保護者が
何を望んでいるかを読み取り、
それに合った内容にする必要がある。
保護者が何を求めるかは、地域によって全く異なります。
いずれにしろ保育事業全般、成功しにくいビジネスなので、
オススメできません。介護ビジネスのほうが儲かりますから!

※1総合こども園……2006年から、
保育所と幼稚園の機能を一体化させた施設
「認定こども園」がスタートした。
これをバージョンアップさせ、既存の幼稚園と保育所を
認定こども園のような施設に移行させていく構想が
「総合こども園」。
民主党野田政権が子育て支援策の目玉として打ち出したが、
6月13日、社会保障と税の一体改革法案をめぐる3党の修正協議で、
構想を断念することを自民・公明両党に正式に伝えた。

※2認可外保育所……公立保育所のほか、
児童福祉法に基づき都道府県知事の認可を受けた「認可保育所」、
東京都独自の制度に基づいて
認証を受けた「認証保育所」以外の保育施設のこと。
公立、認可、認証の保育料は世帯所得額などによって
定められ比較的安いが、
認可外の保育料は事業者側が自由に設定できる
(上限は決められている)。

角川慶子(かどかわ・けいこ)
1973年、東京都生まれ。「角川春樹事務所」会長・角川春樹氏の長女。
自身も元アイドルという異色の肩書きに加えて、
ビジュアル系バンド好きで、
元バンギャルの"鬼畜ライター"としても活躍。
9月1日に「駒沢の森こども園」をオープンさせる。
家庭では4歳の愛娘の子育てに奮闘中。
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