タイで脚光、シュタイナー教育 バーンラック幼稚園 遊んで学ぶ原点


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タイ国内の緑に包まれたバーンラック幼稚園の朝は、
午前8時半ごろに始まる。
幼稚園の送迎バスや保護者のマイカーで送り届けられた
子供たちが園内に足を踏み入れると、
それまでの静寂が一転して歓声が渦巻く。
笑みがこぼれる子供たちは無邪気そのもので、
各自が思いつくままに創意工夫して自由に「遊び」を組み立てていく。
バーンラック幼稚園が掲げるシュタイナー教育の原点がここにある。
事務局長の佐藤正喜さん(63)は
タイに移り住んでから間もなく30年。
大半をバーンラック幼稚園とともに過ごしてきた。
もともとシュタイナー教育を志向したわけではない。
佐藤さんたちが取り組む様子が、
独シュタイナー財団の目に留まり、支援対象となった。
「30年近く続けた取り組みについて、
それはシュタイナーですよといわれた。
ただ、それだけのこと」と佐藤さんは笑う。

◆自立的な人格形成

シュタイナー教育は、20世紀初頭にオーストリアの思想家、
ルドルフ・シュタイナーが提唱した。
人間が生まれてから21歳に達するまでの成長過程を7年ごとに区分。
第1七年期(0~7歳)、第2七年期(7~14歳)、
第3七年期(14~21歳)とし、
それぞれの時期に必要なのは「意志の成長」
「感情の成長」「表象活動の活発化」であるとした。
最終的に自由で自立的な人格形成を目指す。

世界各地でシュタイナーの教育理念に共鳴した
学校が開設され、日本にも文部科学省に認可された学校法人が
神奈川県相模原市などにある。
NPO法人(特定非営利活動法人)が運営する
「フリースクール」を含めれば、
愛知県日進市や京都府京田辺市など、
その数は日本国内で十数校にも上る。

佐藤さんはこうしたシュタイナー教育の理念をかみ砕き、
「幼少期においては、創造性と模倣性の
2つが何よりも重要」と説く。
「遊びが楽しければ、子供たちはもっと楽しもうと創意工夫する。
もっと何かないかと大人のまねをする。
そのためには自由に遊ばせることが最も大切。
おおよその方向性を示すにとどめ、
課題や指示が一切ないのはそのためだ。
まねされるから、大人も変なことできない」(佐藤さん)

バーンラック幼稚園の園児は現在、
日本人が60人、タイ人が30人。
日タイの両親を持つ子供が10人ほど在籍するが、
人種によるクラス分けはしない。
教室も日本のような「学年制」を採らない。
年少から年長までの年齢の異なる子供たちが
大部屋で一緒に遊び、一緒にパンの生地をこね、
一緒に絵を描き、一緒に給食をとって、一緒に昼寝をする。
必然的に身体の大きな子供が
年少の子供の面倒を見るようにもなる。
「教室然としていないところが特徴。
家の延長上だから、ここは」(同)

◆政府から高い評価

緑が豊富な園庭は広さ3000平方メートル。
地面は一面、柔らかな芝に覆われ、
高さ20メートルはあろうかという何本もの広葉樹が、
子供たちを上空から優しく見守る。
ウサギやカメなどの小動物も放し飼い。
「自然にあるもの、実際にこの世に存在するものを、
体で感じ取ることが大切だと考えている」と佐藤さんは言う。
子供たちは広い園庭に散らばって、遊びに没頭している。

雨期のこの時期に突然の降雨は毎日のことだ。
そのような時も誰も慌てない。
子供たちとタイ人の先生が一緒になって
タイ語の童謡の「替え歌」を口ずさみながら、
誰からともなく遊具の片付けを始めていく。
「あ~め~が、降ってきた~♪ 片付けよぉ~♪」。
ともすれば面倒な片付けまでもが遊びとなってしまう。

バーンラック幼稚園の取り組みは、
タイ政府からも高い関心と評価を得ている。
タイで最も権威と歴史のあるチュラロンコーン大学からは
教育実習生が派遣され、その後、同園に就職する学生もいる。
視察はタイ各地からひっきりなしに来る。

タイ語で、バーンは「家」、ラックは「愛」。
「愛の家」と名付けられたシュタイナー教育の幼稚園が、
間もなくタイの地で開園30周年を迎えようとしている。
(在バンコク・ジャーナリスト 小堀晋一)
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