認定こども園「拡充」なるか 待機解消の道筋 不透明


東京新聞
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衆院を通過した「社会保障と税の一体改革」の関連法案で、
幼稚園と保育所を一体化する「総合こども園」の創設が見送られ、
現在ある「認定こども園」の幼保連携型を拡充するとした。
共働き家庭が増える中、
子育て支援の後押しとなるだろうか。(小形佳奈、福沢英里、稲熊美樹)

保育所の待機児童は、
全国で約二万五千六百人(昨年四月一日現在)。
そのうち、〇歳~二歳児が八割を占める。
認定こども園の拡充で、保育所や幼稚園からの
移行が促進され、待機児童の解消につながるのか-。

「中身を充実させようとすればするほど経営を圧迫する」。
東京都世田谷区で、都の認証保育所から移行した
認定こども園「昭和ナースリー」を運営する
「NPO昭和」の比嘉秀之事務局長は嘆く。

同園は幼稚園と保育所の国の設置基準は満たしていないものの、
都の認定を受けた「地方裁量型」の認定こども園。
国の補助金を受けず、
都や区からの補助と保護者の保育料のみで運営している。
それだけに、認可外にも国が財政措置をする
「総合こども園」の創設に期待していた。

保育料には楽器や粘土の購入費、外部講師への謝礼も含まれ、
保護者からさらなる徴収は難しい。
保育料は月に二百二十時間利用で、
三歳未満児が八万円などと上限が決められている。
「補助の少ない地方裁量型には、
どこも手を挙げないだろう」と指摘する。



岐阜市の認定こども園「わかくさ幼稚園」は、
幼稚園と認可外保育所が同じ敷地内にあり、
渡り廊下で行き来できる。
保育所は、保護者が働いていなくても二歳になると入園可能。
幼稚園は午後七時半までの預かり保育と、
特色ある教育で人気。「二歳未満の下の子も
一緒に入園させたい」という保護者の要望は絶えない。
しかし、保育所は認可外のため、国や市の補助金はない。
保育料だけでは人件費しか賄えず、施設の新増設は難しい。

今回、消費税増税による財源から
七千億円を子育て支援に回す方針は残り、
保育所や幼稚園、認定こども園などの
数を増やすために約四千億円を投入する。

ただ、国がどうやって、認定こども園を拡充させるのかは不透明。
認定こども園の所管は内閣府になり、
移行を促進させるとするが、
従来の保育所、幼稚園とも移行は義務付けられず、
所管も厚生労働省、文部科学省と分かれたままだ。

ある県の担当者は、今回の合意案について
「認定こども園へ移行しよう、
という動機付けになるような制度ではない」と話す。

「保育園を考える親の会」代表の普光院亜紀さんは
「待機児童解消のスピードを上げるには、
認定こども園への移行を待つより、
現行の保育所を増やすことが必要」と指摘する。



「おだっこさんは並んで」。
午後一時、職員の掛け声で「おだっこ」と呼ばれる
月極預かり保育の子どもたちが、
荷物を持って別室へ移動する。
保護者の迎えや送迎バスで帰る子どもは教室に残り、迎えを待つ。
東京都多摩市の「おだ認定こども園」の日常の光景だ。

同園は一九七六年創立の幼稚園を母体に、
二〇〇二年、都の認証保育所を併設し、
〇~二歳児の保育を始めた。
一〇年、認可保育所と幼稚園を一つにした
幼保連携型認定こども園として再出発。
幼稚園利用者には週末行事の
振り替え休日や夏休みがあるが、保育は休まない。
職員の半数が幼稚園教諭と保育士両方の免許を持つ。

幼保連携型では必須とされる子育て支援事業では、
一時預かりや、園児でない親子同士が交流したり、
職員に育児相談できる「広場」を毎日開く。
「保育と教育を一体的に保障するだけでなく、
地域の多様なニーズにこたえている」。
石阪恒子施設長は胸を張る。



認定こども園は、幼稚園と保育所の機能を一体化した施設。
働く母親が増え、保育所に入れない待機児童がいる一方、
幼稚園は定員割れもある現状の改善などを目指し、
自公政権時代の〇六年十月に導入された。
幼保連携型の場合、三歳児以上は
保護者の就労にかかわらず入園でき、
途中で事情が変わっても転園せずに済む。
認定数は四月時点で九百十一。
国が〇八年に掲げた目標の二千件を大きく下回る。

背景の一つは仕組みの複雑さだ。
認定こども園は「幼保連携型」「幼稚園型」
「保育所型」「地方裁量型」の四類型が存在。
現在、保育所は厚生労働省、幼稚園は文部科学省と
所管が二省に分かれ、
補助金の申請などで煩雑な事務手続きを強いられている。

二〇一〇年に幼保連携型の認定こども園になった
同県豊橋市の「希望が丘幼稚園」は、
保育所を新設して移行した。
藤城民男園長は「幼稚園と保育所職員の給与体系が違い、
そろえるのに苦労した」と話す。



政府は当初、所管を内閣府に一本化する
総合こども園を新設、保育所や幼稚園から移行させる
「子ども・子育て新システム」の導入を目指した。
株式会社の参入も認め、基準を満たせば認可、
無認可を問わずに国が財政措置をする
「指定制」も導入するとした。

だが、自公両党が「質の低下を招く」と批判。
三党合意では、幼保連携型の認定こども園の所管は
内閣府に一本化し、連携型のこども園拡充へと方針を変更。
移行は各施設が判断することになり、
旧来の仕組みはそのまま残る。
認定こども園は保護者が直接、園と契約するが、
従来の保育所利用は、引き続き
保育の必要性の判断と契約を市区町村が担う。
◆認定こども園の4類型 

<幼保連携型> 職員配置や設備など
国の設置基準を満たした認可幼稚園と
認可保育所が一体的な運営を行う

<幼稚園型> 認可は幼稚園のみ。
3歳未満児保育を行う場合は、
認可外保育所と同じ扱いで国の補助はなし

<保育所型> 認可は保育所のみ。
幼稚園的機能も持ち、
親の就労にかかわらず3歳児以上なら入園できる

<地方裁量型> 国の基準を満たさない
地域の教育・保育施設が、国の補助を受けず、
自治体の補助などで運営
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