「保育ママ」活躍の場広く


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個人宅などで少人数の子どもを預かる
「保育ママ」が多様化している。
保育士などの資格のある人が自宅で預かるだけでなく、
社会福祉法人やNPO法人が「保育ママ」を雇用し、
マンションの部屋や学校の空き教室で
子どもの面倒をみるケースも出てきた。
利用者も増えており、保育所不足が続く中、
待機児童解消の切り札として注目されている。(内田淑子)
 マンションや空き教室で

東京都世田谷区の住宅街にあるマンション。
隣接する4部屋の入り口に、
「貴原さんのおうち」などと書かれた表札が掛かっていた。
表札は、それぞれの部屋の保育ママの名前だ。
1DKタイプで、1部屋に5人ずつの子どもたちが過ごす。

ここでは、同区内の祖師谷保育園を運営する
社会福祉法人「雲柱社うんちゅうしゃ」が
3年前から保育ママ事業を行っている。

各部屋を担当する保育ママは
それぞれ保育士の資格を持ち、法人が雇用している。
さらに、保育ママとペアを組む補助者も複数配置し、
手厚い態勢を取っている。

4部屋は隣り合っているので、子どもたちは
ベランダ側で行き来もできる。
近くの祖師谷保育園からベテラン保育士が
週1回以上訪問して保育ママの支援にあたる。
園長の菊地せい子さんは、「子どもたちは
保育園の行事に参加しています。
保護者にとっても、園の栄養士や
看護師に相談できるメリットがあります」と説明する。

埼玉県志木市では、小学校の空き教室をリフォームして
幼児用トイレや沐浴もくよく設備、キッチンを作り、
昨年11月に市内で初めての「保育ママ・ステーション」を開いた。

運営するのは市から委託されたNPO法人。
現在は0~2歳の7人が利用している。
保育ママは保育士の資格を持つ。
子どもと保育士のグループを三つ作り、
教室内を仕切って計9人まで預かる予定という。

保育ママ制度は2010年度から
国の事業として位置づけられたが、形は様々だ。
最近は、志木市の「保育ママ・ステーション」のような、
2、3人の保育ママが同じ部屋の中で保育する
「グループ型」と呼ばれるものが増えている。
保育ママが共同でマンションを借りるケースもある。

駒沢女子短大教授の福川須美さん(家族社会学)は、
「もともと利用する親の側には、
個人宅に子どもを預かってもらうことへの
抵抗感や密室性への不安がある。
グループ型の保育は、そうした不安を解消するための方法の一つ。
親にとっても、利用しやすい制度になっている」と説明する。

保育ママが1人で個人宅で預かる際にも、
近くの保育所が連携してアドバイスをしたり、
市町村の担当者が巡回指導したりするなど、
保育ママを支援する取り組みが進んでいる。

国の事業になった10年度以降、実施する自治体が相次ぎ、
11年度は104か所に達した。
利用者もそれに合わせてここ数年急増。
08年度は約1990人だったが、
11年度には約5710人になった。
保育ママの人数も10年間で倍増した。
福川さんは「自治体は、保育ママが孤立しないよう
連携を進め、活動を後押ししてほしい」と話している。
3歳児以降の預け先課題

関心が高まる「保育ママ」。どんな事業なのだろう。

■どんな場合に利用できるのか

共働きなどで日中子どもの世話をできない場合。
対象年齢は「2歳児まで」としている自治体が多い。
保育ママ事業は各自治体の判断で実施するため、
制度がないところも。
保育所への入所を希望しながら
入れなかった場合に利用するケースが目立つ。

■どこに申し込むのか

自治体の窓口で受け付けるところと、
委託先の社会福祉法人などに直接申請するところがある。
利用料は月額2万~3万円程度。

■保育の特徴は何か

法人が委託を受けるなど形態は多様化しているが、
中心になっているのは、個人宅で預かる保育ママ。
保育士の資格を持っている人のほか、
自治体の研修を受けた人が認定を受けて、子どもを預かる。

子どもが少人数のため、保育のきめ細かさが特徴の一つ。
横浜市の家庭保育福祉員(保育ママ)鈴木道子さんは
「一人一人の状態をしっかり見ることができます」と話す。

■安全対策は

個人宅で預かる場合には、第三者の目が
届きにくいことが指摘されている。
このため自治体が巡回指導に力を入れる。
保育ママらで組織するNPO法人「家庭的保育全国連絡協議会」では
事故予防にも力を入れ、乳幼児突然死症候群(SIDS)の
予防策などで積極的に情報交換している。

■待機児童解消になるか

保育ママは、保育所不足の受け皿になってきた。
自治体にとっては、保育所を整備するより費用がかからず、
準備期間も短くて済むというメリットがあるからだ。
国は今後、さらに制度を拡大させたい考えだ。
現在、国会で審議中の「認定こども園の拡充を柱とする
子育て関連法案」でも、
保育ママ事業は国庫補助の対象として位置づけられた。

今年4月現在664人の待機児童がいる大阪市は、
今年度「保育ママバンク」をスタートした。
市が保育ママと補助者を登録し、保育ママに対して、
一緒に保育をする補助者を紹介する仕組みで、
235人の保育ママ・補助者候補が市の研修を受けている。

ただし、待機児童対策で保育ママが増えても、
3歳児以降に入所できる保育所が不足しているなら、
親の不安は変わらない。
保育ママ事業を推進すると同時に、
3歳児以降の預け先を確保することが
自治体の課題になっている。

保育ママ
 1950年代から自治体が実施する事業。
自治体によって「昼間里親」「家庭福祉員」制度などという。
国も2010年度から児童福祉法で「家庭的保育」として位置づけた。
国のガイドライン(指針)では、
保育ママ1人が預かれる子どもは3人まで
(補助者がいる場合5人まで)とされている。
待機児童対策のほか、保育所が存続できない過疎地でも、
制度の活用が期待されている。
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