風疹は「出産・育児世代の感染症」、来年も流行の可能性


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国立感染症研究所・多屋馨子氏に聞く

風疹(三日はしか)が全数報告となった
2008年以来の大流行を記録している。
今年初めから先週までの報告数は1,000例を超えた。
風疹は過去に5~6年ごとの大きな流行を繰り返している。
今回の流行は昨年、複数の地域の職場で起きた
30~50歳代の男性が中心の集団発生に端を発しており、
国や自治体が積極的に対策を呼び掛けている。
「風疹の流行は2~3年連続して起こることが多く、
1年目より2年目の方が規模が大きいという
これまでの流行の傾向と同じ」と指摘するのは、
国立感染症研究所感染症情報センターの多屋馨子氏。
同氏は、風疹は今や「出産育児世代の感染症」で、
ワクチン接種による感受性者の積極的な
減少対策が進まなければ、来年も同様の流行が起こる
可能性があると警鐘を鳴らす。

「かかって当たり前」の時代は終了

感染研の調査によると、2008年の風疹患者の年齢分布は
乳幼児や小児が中心だったが、
昨年の報告では30歳代をピークに
20~50歳に幅広く分布している。
幼児期と中高生への麻疹(はしか)・風疹混合(MR)ワクチンの
2回接種導入によって子供がかかりにくくなったことから、
風疹は「出産・育児世代の男性に多い感染症」
(多屋氏)という。

2011年の調査からは、30~50歳代前半の男性で
風疹に対する抗体を持っていない人の割合が最も多く、
次いでMRワクチンの2回目が未接種の
第3期(中学1年生相当)と第4期(高校3年生相当)の
男女で抗体を持っている割合が低いことが明らかになっている。

「30~50歳代前半の男性の5人に1人が
抗体を持っていない状態。地域による差はありません」と同氏。
今年の流行も、昨年起きた職場での
風疹流行が抗体を持っていない人の間で
再び広がっているためと分析している。
今回、全国の約半数の都道府県で患者が報告されているが、
どこで流行が起こっても不思議はないという。

1990年以前生まれはワクチン接種を

風疹は一般に重篤な状態にならないとされているが、
成人でも脳炎や関節炎の発症例があるほか、
妊娠初期の風疹ウイルス感染による
胎児の先天性風疹症候群のリスクが高まる(関連記事)。
風疹も先天性風疹症候群も有効な治療法はなく、
ワクチンによる予防しか手段はない。

しかし、妊娠する可能性のある女性だけが
ワクチンを接種しても、周囲の人々に抗体がなければ
風疹の地域的な流行は抑えられず、
先天性風疹症候群の発生も防げない。
というのも、母親が風疹にかかったことがあったり、
ワクチンを受けいたりしても
抗体が不十分な場合があるためだ。

日本では1977年に女子中学生を対象に
風疹ワクチンの定期接種が導入されたが、
状況に応じて接種制度が変更されてきた(表)。
1990年4月1日以前生まれの人は全く接種していないか、
接種したとしても1回のみ。
そのため、職場などで妊娠の可能性がある女性や
妊婦に接触することのある20~50歳代の男性は、特
に注意が必要だ。
多屋氏は「機会を作って
MRワクチンを受けてほしい」と要望する。


手洗い・うがいでは予防できない

今回の風疹流行の初期には「妊婦は感染に注意」
「手洗い、うがいなどの予防策を」といった報道が見られたが、
妊娠の可能性がある女性や妊婦はワクチンが受けられない。
また、「手洗い、うがいは一般的な衛生習慣として大事ですが、
風疹の予防策ではありません」と多屋氏。
風疹ウイルスの感染力の強さは麻疹ウイルスのおよそ半分で、
インフルエンザウイルスよりも強い。

同氏は「風疹ウイルスは
飛沫(ひまつ=せきやくしゃみなどによって飛散する体液の粒子)
によって感染するので、理論的には
半径2メートル以内にいる人にしか感染しません。
しかし、風疹の症状ははっきり出ないことも多く、
職場や家庭で2メートル以内の距離の
“濃厚接触”は日常的にあることです」と、
一般的な感染予防策だけでは十分とはいえないと指摘する。

これらのことからも、妊娠している、
あるいはその可能性のある女性が自分だけで
風疹ウイルスの感染に注意することはほぼ不可能だろう。
同氏は「妊婦さんの同居家族は
今すぐにワクチンを受けてほしい。
妊婦さんも家族にぜひ受けてもらうよう
お願いしてください」と強調する。
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