被災保育士の声伝える


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上尾市瓦葺の映像制作業伊藤義将さん(41)が、
東日本大震災で被災した保育士らの声を集めた
DVD映像を撮影している。
保育所の防災を題材にした1作目は昨年9月に完成。
保育士らの心のケアをテーマに、2作目を取材中だ。

伊藤さんは仙台市出身。
日大芸術学部放送学科に進学する際、県内に移り住んだ。
制作会社に勤務後、2010年に独立し、
自治体や大学、企業のPR映像などの制作を手がけている。

昨春、ドキュメンタリー制作を行う岩波映像(東京都文京区)から
「被災した保育所で防災について取材し、
保育士の研修で使う映像を撮ってほしい」と依頼を受けた。

昨年4~8月、監修の天野珠路・
日本女子体育大准教授やカメラマンと、
岩手、宮城、福島3県などで撮影を実施した。

宮城県気仙沼市にあった一景島保育所の元所長の女性は、
職員、子どもたちと共に公民館に避難した。
津波からは全員が逃れたが、周り一面が火の海に。
「一時は死を覚悟した」。
子どもたちを寒さと恐怖から守るため、
カーテンを集めてかぶせた。救出されたのは3日目。
「私の最後の使命かと思った」
「粘り強い子どもたちの気持ちもあった」と語り、涙を流した。

同県名取市にあった閖上(ゆりあげ)保育所では、
自閉症の子どもが避難所で不安に思わないよう、
保育士がその場にあった紙に絵を描き
「バスに乗ってお水のない、違う学校に行きます」などと説明。
連絡がつかない家族に代わり、付きっきりで面倒をみた。
その後、児童は無事両親と再会。
当時の女性所長は「ご両親が迎えに来たときの顔は
忘れられない。いい表情でパパに飛びついていった」と振り返った。

自分の事は二の次にして子どもたちのために奔走し、
時に涙しながら話す保育士らの言葉に、
伊藤さんは激しく心を揺さぶられたという。

完成したDVD「3・11 その時、保育園は」は、
「記録的価値と教育的価値を併せ持つ力作」との評価を得て、
今年4月、優れた科学技術映像作品を表彰する
科学技術映像祭(日本科学技術振興財団など主催)で
特別奨励賞を受賞した。

伊藤さんは現在月に2度ほど被災地を訪れ、
2作目を撮っている。
避難先の託児所で思うような保育が出来ず、
ストレスから2か月も入院した福島県の保育士らを
取材しているという。

伊藤さんの妹(28)も宮城県岩沼市におり、
震災のストレスで、言葉がうまく聞き取れない障害が残ったという。
「震災直後に自分が近くにいれば、
妹のストレスも軽減できたのではないか。
そんな後悔もあり、DVD制作を通じて、
被災地の人の心の傷を伝えたいんです」

続編は、年内の完成を目指している。
DVD(6000円)についての問い合わせは
岩波映像(03・5689・2601)へ。
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