<はたらく>仕事を点数換算 職務評価 導入目指せ 「同一価値労働同一賃金」へ


東京新聞
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日本の賃金制度では、同等の仕事をしているのに、
男女や正規と非正規など、性別や雇用形態の違いで
賃金に大きな差がある。
不当な賃金差別を改めようと
「同一価値労働同一賃金」の実現を目指す団体が、
公正な賃金の決定に欠かせない「職務評価」の
手法を実践する体験会を開いている。
記者が体験会に参加し、その手法を学んだ。 (田辺利奈)

八月下旬、市民団体「均等待遇アクション21」(東京都)が
埼玉県内で開いたワークショップ。
全国から自治体の男女共同参画担当者や
NPO関係者ら二十七人が参加した。
女性の割合が高いため、賃金が低くなりがちな
保育士を題材に手法を学んだ。

職務評価は、仕事に求められる知識や
技能、肉体・精神的な負担などを細かく評価。
最終的には点数で価値を表し、平等な賃金の算出につなげる。
この日は同一価値労働同一賃金を推進する
「ペイ・エクイティ・コンサルティング・オフィス」(PECO、東京都)が
国際基準を基に策定した評価方法に従って、作業を進めた。

六~七人の班に分かれ、
まずは保育士が保育所で担当する職務を挙げた。
記者の班では、議論の結果「子どもの安全確保」
「発達に応じた活動支援」「日誌記入などの事務作業」が挙がった。
それぞれの職務について、
「知識・技能」「負担」「責任」「労働環境」の四要素に分解し、
それぞれをさらに細かく点数化=図表参照。
千点満点の合計点で仕事の価値を計る。
重要なのが、通常は評価されない“気配り”といった
「感情労働」も評価することだ。

時間の制約もあり、職務のうち
「子どもの安全確保」だけを点数化した。
「対人責任」「コミュニケーション技能」「問題解決力」などが
高い得点となった半面、「労働環境の不快さ」
「仕事の手際や機器の操作などの技能」などは低い得点に。
最終的に八百二十五点という評価になった。

他の班も八百点を超えたところが多く、
参加者からは「保育士さんには、こんなにたくさん仕事があったのね」
「親の対応も大変なはず」との声も。
他の仕事での平均は六百五十~七百点で、
保育士の感情労働も含めた仕事の幅広さや
負担を再認識したことで、高い評価になった。

非常に手間と時間のかかる作業だが、
他の業種との客観的な比較も可能になる。
参加したNPO法人「男女共同参画フォーラムしずおか」(静岡市)の
谷口年江理事(52)は「職員の給料を決める身として、
期限雇用の人にこそ職務に応じて払うべきだと思う。
参考にしたい」と話した。



日本は、同一価値労働同一賃金を定めた
国際労働機関(ILO)100号条約を批准している。
しかし、賃金差別が解消されていないとして、
ILOから昨年、違反勧告が出された。
二〇一一年版の男女共同参画白書によると、
一〇年の給与は、一般労働の男性に比べ、
一般労働の女性は69・3%しかない。
短時間労働の男性で54・7%、
短時間労働の女性では49・5%にとどまる。

条約の実効性確保のため、政府が一〇年に
閣議決定した第三次男女共同参画計画には
「職務評価手法等の研究開発を進める」と盛り込まれた。
PECOの屋嘉比(やかび)ふみ子代表(63)は
「職務評価は今後避けて通れない。
会社と裁判になったときには証拠としても通用する。
数字で仕事の価値が見え、自信にもなる」と話す。

PECOが職務評価の方法を解説したDVD
「ジェンダー平等社会をめざして やってみよう!職務評価」は、
一部千円で販売している。
付属の冊子には実践用ワークシートも。
購入申し込みは均等待遇アクション21
=電03(5689)2320=へ。
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