【神奈川県】「こども会」復活のとき


朝日新聞
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 異年齢の子どもが集団で遊び、
行事やスポーツを通して交流する「子ども会」。
塾や習い事で子どもが忙しくなり、親の役員決めも難航し、
県内でも加入率は減少の一途をたどる。
そんな中、会の意義を見直し、
復活に向けて奔走する母親たちが平塚市にいる。

 「いつも登下校を見守って頂き、ありがとうございます」。
先月、平塚市の公民館で開かれた桃浜町自治会の敬老会。
「桃浜子ども会」の会長、女児(12)が
お礼の言葉を述べると、たちまちお年寄りの顔がほころんだ。
続いて童謡「紅葉(もみじ)」を19人で合唱。
お年寄りも口ずさみ、会場は温かな空気に満ちた。

 だが実は一昨年、子ども会は解散の危機にあった。
「新入生は会員の弟妹しか入らず、役員も同じ親ばかり。
もう限界かなって話してました」。
親側の会長、副会長を務める大久保志津子さん(48)、
原田千佳子さん(45)は打ち明ける。

 かつては町内のほとんどの小学生が入会し、
野球チームまであった桃浜子ども会の入会率が、
最近は2割を切っていた。
だが、我が子を参加させてみると、
年上が年下に頼られて自信をつけたり、
祭りなどで地域に愛着を感じたりする会の良さも実感していた。

 そんな大久保さんたちの背中を押したのが、
昨年の東日本大震災だった。
津波や避難所のニュースを見るたび、
地域の絆が生死や避難生活の質、
その後の復興まで左右することが胸に染みた。
子どもたちが、隣近所で顔見知りである地域社会が、
いかに大切か。

 「主婦の私は現地にボランティアにはいけない。
でも私は私の足元で、やれることがあると思いました」
と大久保さんは話す。

 多くの保護者や地域の人がかかわる子ども会を、
一足飛びには変えられない。

 まず、当時の会の役員らで再編案を協議=表。
関心を持つ人を増やしながらも緩やかに参加できる
活性化策の提案を決め、昨年5月、
自分たちの思いを回覧板で表明した。

 「被災者が復興に向けて新しい一歩を踏み出すように、
私たちも今までの生活スタイルを変えていく必要があると考えます。
10年後の桃浜町を思い、地域のつながりを強化しませんか」。
秋には自治会の役員会や小学校に再編案を説明し、
対象世帯に手紙を渡した。
「横暴だ」「家族の時間を大切にしたい」などの苦情もあったが、
今年4月に始まった新生子ども会には
前年度の4倍近い90人弱が参加。
加入率は6割を超えた。

 5月の歓迎会には40人以上が集まり、
夏のラジオ体操には久々に大勢の子どもが戻った。
初参加者から役員を引き受けてくれる親も出た。
書記の岩本優美子さん(43)は
「結婚して縁のない土地に来た私自身、
初めて地域とのかかわりが持てた」と話す。

 今回で会長3度目の大久保さんには、
町で子どもたちから「おばちゃん、おはよう」と声がかかる。
子どもも大人も、誰かが自分を見守っていると
思える地域になればいいと思う。

■加入率、20年で半減

 県子ども会連合会(県子連)によると、
10年度の県内の会員数は14万8225人。
小学生の加入率は31・1%で、
この20年で半減した=グラフ。

 全国子ども会連合会(全子連)の副会長でもある
山上武久・県子連会長(72)によると、
子ども会は戦後の食糧難の時代に、
貧しい子どもを地域で救済しようと全国で始まった。
地区や学校、篤志家など主宰者は様々で、国も後押しした。
 だが85年をピークに会員数が減少に転じる。

 「家庭が豊かになり、キャンプもマイカーに乗って家族で行く。
子どもの社会性を育み、地域の文化の担い手を作る
という目的が忘れられていった」と山上さんは振り返る。
スポーツや塾などの習い事を好み、
自分の子以外の面倒を見るのを嫌がる親も増えた。

 「だが、核家族化や個人主義が極まった今こそ、
子ども会の重みが増す」と山上さん。
全子連には、東日本大震災の避難所運営でも、
子ども会活動が盛んな地域がスムーズだったとの
報告があったという。
山上さんの元にも、休止していた子ども会を
復活させたいという相談が数件寄せられているという。
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