【毎日新聞】社説:児童養護施設 この子らも忘れるな


毎日jp
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 親から虐待された子が、保護された施設でまた虐待される。
こんな理不尽が許されてはいけない。

 津市の児童養護施設で女性職員4人が保護されている子の
頭を殴ったり椅子に縛ったりする暴力を繰り返していたとして
三重県が立ち入り調査を行った。
厚生労働省によれば児童福祉施設での虐待が
11年度だけで計46件あった。
千葉県船橋市の児童養護施設「恩寵(おんちょう)園」で
園長や職員らが保護された子どもたちに対する
傷害や強制わいせつなどで逮捕され実刑判決を受けてから11年。
国は児童福祉法を改正して「施設内虐待」を明文化し、
専門職の配置に加算を付けるなどの対策をしてきたが、
改善はまだ道半ばだ。

 児童養護施設は現在579カ所あり計約3万人の
子どもたちが暮らしている。
半数以上が被虐待児だ。
また、20人以上の集団で暮らす施設が大多数で、
雑居部屋が多く、子ども同士のいじめも深刻だ。
配置基準は原則子ども6人に対して職員1人で、
諸外国の水準に比べて著しく低い。
虐待やいじめが後を絶たないのは、
個々の職員の資質だけでなく
劣悪な居住環境や人手不足も遠因となっている。

 厚労省は大規模施設での集団処遇から、
小規模で家庭的な養護を進める方針を示し、
来年度概算要求にグループホームや
施設の小規模化のための整備費を盛り込んだ。
ただ、小規模なユニット制にすると職員数は
さらに増やさなければならない。
施設を出た子のケアの必要性も指摘されている。
建物を小さくするだけでなく、職員配置基準の
抜本的な見直しがいる。
虐待の後遺症がある子や発達障害の子のケアには
専門性の高い職員も必要だ。
子ども・子育て新システムでは消費増税にあわせて
7000億円の財源を投じて保育サービスを拡充するが、
施設で暮らす子のことも忘れないでもらいたい。

 児童養護施設は戦災孤児保護のため
戦後間もなく孤児院から名称変更された。
浮浪化した孤児たちが警察官らから家畜のように
トラックに詰め込まれ留置施設に運ばれる様子を
米国の歴史家ジョン・ダワー氏が
著書「敗北を抱きしめて」で記している。
子どもらは「一匹、二匹」と数えられ、体罰を受け、
逃亡を防ぐため裸のままにされた男児もいたという。
さらに作家の大佛次郎の著述を引用し
「実は、日本人は他人への愛情に欠ける
国民であるというのが、彼(大佛)の結論であった」と述べる。

 そんなことはないと否定できるだろうか。
親のない子、虐待されて傷ついた子らが雑居部屋で暮らし、
さらに職員に虐待されるケースが
今もある現実から、目をそむけるべきではない。
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