【静岡】「こども園」縦割りの壁


中日新聞
------------------------------------------------
◆増える待機児童

 「いただきまーす」「先生、おいしいね」

 午前十一時すぎ、浜松市南区の可美保育園で、
学年ごとに昼食が始まった。
例外は一歳児のクラス。
入園希望者が多いこの学年は、定員を七人上回る
二十七人が在籍。
落ち着いて食べられるように二部屋に分かれていた。

 遠藤浩子園長(56)は
「一学年で二十七人はかなり多い。
保育士はきちんと配置できているが、
これ以上増えるとクラス運営が難しくなる」。
園全体でも百五十人の定員に対して
百六十七人を受け入れている。

 保育ニーズの高まりを受けて、
保育園は全国的にパンク状態だ。
浜松市でも公立二十二園のうち十八園、
私立では六十五園のうち五十八園で定員を超えている。

 それでも「待機児童」は減っていない。
浜松市では四月時点で百六十六人と県内で最も多い。
園の増築などで昨年より総定員は
百五十人増えたにもかかわらず、
待機児童数は五十一人も増加した。

 一方、利用者が減っているのが幼稚園。
公立、私立を合わせた総園児数は
二〇〇六年の一万七千五百五十六人から
一二年には一万五千八百九十九人まで減った。
公立では利用率が五割を切る園も多く、
四園が休園している。

 増え続ける待機児童と、園児が集まらない幼稚園。
この二つの問題を解決しようと、
〇六年に導入されたのが幼保一体型の「認定こども園」だ。
定員割れした幼稚園が移行すれば、
保育園を新設せずに待機児童を吸収できるとの狙いだった。
ただ、四月一日時点の設置数は
全国で九百十一園で、国の目標の半分にとどまる。

 浜松市内に三つある認定こども園の一つ、
「クリストファーこども園」の太田雅子総園長は
移行が進まない要因に“縦割り行政”を挙げる。

 「幼保一体化」を掲げながらも実際は
保育園部分を厚生労働省、幼稚園部分を文部科学省が
所管するため、補助金の申請や監査などの
手続きは別に行う必要がある。
太田総園長は「事務作業が煩雑で、
専門職員を三人置いて対応している」と話す。

 政府は一元化を推進しようと、
移行は「任意」とした「認定こども園」よりも、
強く移行を求める「総合こども園」法案を
先の通常国会に提出したが、
自公両党の反発を受けて廃案に。
話し合いの末、認定こども園を拡充する現行法改正に落ち着いた。

 改正案では、内閣府に窓口を一本化し、
財政支援も充実させる。
だが、幼稚園と保育園、認定こども園が
併存する仕組み自体は変わらず、
どれだけ普及が進むのかは未知数だ。

 幼保一体化に限らず、民主党政権の
子育て支援は二転三転した。
遠藤園長は「大人の都合ではなく、
子どもが幸せな幼少期を過ごせることが何より大切」と話した。

    ◇

 九月に閉幕した先の通常国会は、
衆院解散時期をめぐる与野党の攻防の影響で、
法案の成立率は58%と過去最低水準だった。
野田佳彦首相が解散を「近いうちに」と
約束してから三カ月余り。
政局の行方は混迷の度を増しているが、
有権者の選択の時は、確実に迫っている。
臨時国会が二十九日、召集されたのを機に、
政治の宿題を静岡の現場で探った。
------------------------------------------------
保育士新卒 保育士転職