命守る「一時保護」なし崩し 和歌山・男児連れ去り


YOMIURI ONLINE
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 ◇知事、判断ミス認める

 和歌山市の児童福祉施設から男児を連れ出した母親らが
未成年者略取容疑で緊急逮捕された事件は、
男児の確保まで4日間かかったため、
専門家などから、「すぐに確保すべきケース」などと、
関係機関の対応に疑問の声が上がった。
特に、県の児童相談所が児童福祉法に基づく
「一時保護」をしたにもかかわらず連れ去られた点について、
「子どもの命を守る『最終手段』が有効に機能しなかった」
などと厳しい指摘が寄せられている。
仁坂知事は24日の記者会見で
「児童相談所の判断ミス」と不手際を認めた。
(上田貴夫、虎走亮介)

 ◆一時保護

 県子ども・女性・障害者相談センター(県中央児童相談所)の
職員が男児の一時保護を告知した後、
連れ去られたことについて、
厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課は
「想定外の事態。結果として命に別条なかったというが、
通常はすぐ子どもの安全を確保すべきケース」とする。

 児童虐待問題の専門機関
「子どもの虹情報研修センター」(横浜市)の
川崎二三彦研究部長は
「行政機関が緊急時に子どもの命を守るための
『最終手段』がなし崩しにされたということ。
関係者は一時保護の重大性をどこまで
認識していたのだろうか」と疑問を寄せる。

 今回のケースに関しては、
「明白な不法行為として、直ちに警察が捜査すべき」と指摘。
14日の時点で、児童相談所は警察に対し、
身柄の確保に向けた協力要請をするべきだったとする。

 ◆連携

 和歌山北署は「もし14日に
一時保護の事実を知っていれば、
すぐにでも逮捕に動いた」と強調する。
川崎研究部長は「もみあいなど
混乱した現場の状況に気を取られ、
児童相談所と警察の間で意思疎通が
十分できていなかったのでは」と指摘する。

 県警幹部は「(17日まで)児童相談所側の相談を待ち、
後手に回った形になった。
今回の事案を受けて、連携策を改善しないといけない」と話す。

 県警などによると、児童相談所と県警少年課は毎年2回、
定期的な会合を開いて、虐待を発見した場合の
情報伝達などに関して意見交換しているという。

 厚生労働省の同局総務課は
「身柄確保の現場を想定して県警と児童相談所が
合同訓練を行えば、いっそう役割分担が把握できる」とする。
全国的には、関係機関で家屋に踏み込むなどの
合同訓練をする自治体が増えているという。

 ◆仁坂知事

 記者会見で、仁坂知事は
「すぐに(母親らを)逮捕しても良かった。
説得を優先し、結果としてお粗末な対応になった。
児童相談所の判断ミス」と述べた。

 児童相談所の対応について、
「母親らに対する『善意の配慮』で、
説得による穏便な解決を目指した」と説明。
児童相談所と警察の連携について
「様々な事態を想定して綿密に打ち合わせ、
シミュレーションに基づく訓練をしておくことが大事だ」
などとし、改善に取り組む考えを示した。

 ◇児童相談所とは

 Q どんな施設か。

 A 18歳未満の児童の虐待や非行、不登校などの
相談を受け付け、家庭を援助したり
児童を一時保護したりする。
各都道府県は、必ず1か所以上設置しなければならない。

 Q 県内ではどこにあるのか。

 A 県中央児童相談所の機能に障害者や
女性の福祉も加えた
「県子ども・女性・障害者相談センター」(和歌山市)と、
紀南児童相談所(田辺市)の2か所がある。
センターには今年4月から児童虐待を
専門を扱う「虐待対応課」が新設された。

 Q 一時保護とは。

 A 児童福祉法33条に基づき、児童相談所の判断で、
虐待などの理由で子どもを家庭から引き離し、
併設の一時保護所や児童福祉施設で生活させる。
保護者の同意がない場合でも、
職権による一時保護ができる。
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