【和歌山県】子どもが育つ環境づくり 学校、家庭、行政が一体で


AGARA
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 小中学生の不登校率が高い。
1993~2006年度は、47都道府県中1~5位を推移した。
最近は多少落ち着いてきたが、それでも全国平均を超えたまま。
小中学校合わせて千人以上の不登校生がいる。
加えて中学校では暴力行為が増え、
11年度は前年度比143件増の571件となった。

 全国的には、いじめ事件も大きな問題になっており、
子どもたちの成長、発達を保障する環境は、
息苦しさを増している。

 背景には、人格形成に必要なさまざまな体験が
不足しているという見方がある。
核家族化や少子化の進行、地域コミュニティーの希薄化、
テレビゲームや携帯ゲームの普及などで、
対人関係を学ぶ機会が減少。
学校での集団生活に不安やストレスを感じ、
なじめない子が増えているというのだ。

 そういう状況を打破する、
県教育センター学びの丘(田辺市新庄町)が進めている
「グループアプローチ(GA)」の取り組みが注目されている。
小グループに課題を与え、協力して解決させる手法で、
対人関係能力や意思決定能力などを
育成することを目的とした取り組みで、
08年度から各学校に導入を推進してきた。

 その結果、学びの丘に寄せられる不登校の相談は、
ピーク時の3分の1に減った。
子どもの「学校満足度」も上がっている。
教師の子どもへの理解が深まり、
教師同士が子どもについて話し合う機会が
増えた学校もあるそうだ。

 同様の試みは、全国の先進地でも効果が認められるという。
さいたま市では、国から教育特区の認可を受けて、
05年から「人間関係プログラム」の名で実施、
市内の小学3年生~中学1年生を対象に、
年間12~18時間の授業をしている。
アンケートでは「学校生活が楽しい」
「クラスが明るい」と答える子が増えてきているという。

 横浜市では07年から導入。市教委が小中、幼稚園の
教員や大学研究者らの協力を得て、
独自のGAメニュー「横浜プログラム」を策定した。
市内約500の小中学校のうち約7割が採用。
中学校の暴力行為件数が7年連続で減少するなど、
効果を上げているそうだ。

 不登校やいじめ問題などに詳しい
和歌山大学教育学部の松浦善満教授は
「他県では効果を上げており、導入が進んでいる。
その実績を見ると、県内でも広まると思う。
不登校やいじめなどの対策として効果を期待したい」という。
一方で「ただし、万能とはいえない。
大事なのは、取り組みを継続すること。
同時に、家庭や地域社会の中に、
子どもがほっとできるスペースをつくることも大切」
とアドバイスしている。

 子どもの成長、発達には社会環境や家庭環境、地域性など
多様な要素が複雑に関係している。
それだけに即効性のある特効薬は期待できない。
だが、どんな状況にあっても、
大人が子どもに向き合い続けることはできる。

 学校と家庭、地域、行政が手を取り合い、
子どもを健全に育てる取り組みを続けたい。 (K)
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