就学援助 子どもの格差をなくせ


東京新聞
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 長引く景気の低迷で、子どもの義務教育費さえ賄えない
家庭が増大している。
なのに財政難だからと貧困家庭の子への
就学援助を怠る自治体が相次ぐ。
教育の機会を粗末にしては国の将来は危うい。

 南アルプスの麓に広がる山梨県早川町。
人口千二百人ほどの小さな町はこの春から
全小学二校と中学一校の教育費を無償にした。

 給食費や教材費、社会科見学や修学旅行の費用を
町が肩代わりする。
文房具や体操着などの学用品は自前だが、
子ども一人当たり年八万円ほど助かる。

 教育費の安さにひかれ、
神奈川県や長野県などから引っ越してきた
子育て世帯がいるという。
過疎化や少子化に頭を痛める早川町にとって
望外の成果に違いない。

 それは裏を返せば、同じ義務教育を受けるのに、
住んでいる自治体によって家計の負担が
大きく異なるという地域格差を物語る。

 文部科学省の調査では、
子ども一人にかかる大体の年間費用は
公立の小学校で十万円、中学校で十七万円という。
これは塾や家庭教師、稽古事といった
学校外での学習費を除いての話だ。

 最低限必要なそんなお金を工面できず、
市町村の就学援助に頼る小中学生は
百五十六万八千人に上る。
全体の16%を占め、過去最多だ。
一割は生活保護世帯の子、九割は
それに近い困窮世帯の子だ。

 生活保護世帯には国からお金が出るが、
ほかの低所得世帯をどこまで援助するかは
自治体のさじ加減次第だ。
厳しい懐事情から援助枠を切り詰める動きが相次ぐ。
給食費が払えないとか、
修学旅行を諦めるというような子もいる。

 憲法で義務教育は無償と定めたのに、
教育基本法でその範囲を授業料に限ったのが格差のもとだ。
戦災復興で財源不足とされたからだが、
高度成長期に入っても無償になったのは教科書だけだった。

 高校はもっと深刻だ。国が授業料を負担しても、
公立でさえ年二十四万円の費用が要るという。
自立支援として生活保護世帯には国からお金が出るが、
ほかの低所得世帯の援助の仕組みは貧弱だ。

 日本高等学校教職員組合によれば、
奨学金制度がある市町村は六割にすぎず、
しかも大方は貸与制だ。
長らく借金返済に追われる羽目になる。

 人生のスタート地点となる教育の機会が
親の収入に左右されては、貧困層が固定化しかねない。
優れた才能が埋もれれば、社会の損失になる。
子どもへの投資の底上げを真剣に考えるべき時期だ。
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