自然が先生たくましく 「森のようちえん」 ブームに


東京新聞
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 建物内ではなく、森や公園などの自然環境の中で
未就学児を育てる「森のようちえん」という自主保育グループが、
全国各地で増え、静かなブームになっている。
デンマークが発祥で、北欧やドイツなどに広がっている育て方だ。
具体的にどんな活動をしているのか、現場を訪ねてみた。
 (白井康彦)

 「森のようちえん ねっこぼっこ」は、
愛知県春日井市の里山を中心に、平日は毎日活動している。
午前九時半、母親に連れられて集合場所に幼児らが続々と到着。
記者が訪ねた日は、スタッフ二人と手伝いの母親一人、
三~六歳の幼児十五人でプログラムが始まった。
点呼をしたり歌を歌ったりした後、目的地に歩き始める。

 弁当や着替えなどを詰めたリュックを背負って林の中へ。
イノシシやマムシへの注意を呼び掛ける看板もあった。
葉が黄色や赤に変色し始めた木々のそばで、
どんぐりを拾い集める子も。
上り下りがあるルートを一時間ほど歩き、
目的地の小高い場所に着いた。

 木登りにちょうどいい木があり、男の子も女の子も登り始める。
上手な子が「そこに足をかけて…」などと指導したりする。
スタッフはあまり口出ししない。
「疲れた」という言葉はあまり幼児の口から出ない。
皆、相当に元気だ。午後一時半、集合場所に戻った。

 ねっこぼっこは二〇〇四年に発足。
代表の織田敦子さんは
「昔、田舎の自然の中で母親に育てられました。
自分の子どももそのように育てようと思って…」。
自分の子ども三人もねっこぼっこで育児してきたという。

 幼児らは春日井市や近隣の市から通う。
母親たちは週一回のペースで保育を手伝う。
弁当作りや送り迎えなど負担は小さくない。
だが、「生き物に身近に接することで自然を愛する心が育つ」
「心身ともたくましく育つ」などと
メリットの大きさを感じている母親が多い。

 ねっこぼっこに子どもを通わせていた母親が〇九年、
岐阜県多治見市で「森のわらべ多治見園」を設立。
同様に「森のわらべ」から枝分かれの形で、
一一年に「森のようちえん まめとっこ」(広島市)がスタートした。


◆毎年、全国フォーラム 連携で情報収集


 森のようちえんは、日本では二〇〇〇年ごろから増加。
組織運営や活動の仕方はグループごとに異なるため、
各地の情報収集などを目的に〇五年から毎年、
全国交流フォーラムが開かれている。
今年は九~十一日に兵庫県香美町であり、
約三百人が参加した。

 〇八年には「森のようちえん全国ネットワーク」
(東京都狛江市)が発足。
団体会員は〇九年四月で四十三、
十一月十三日現在で九十六と急増中だ。
ただ、ネットワークに未加入のグループも多く、全国の数は不明。
ネットワーク運営委員長の内田幸一さん(長野市)は
「非会員を含めると長野県だけでも十三ある」と話す。

 森のようちえんは認可外保育だが、
活動の意義が認められて自治体から補助金を受けるグループも。
鳥取県智頭町の「森のようちえん まるたんぼう」は、
県の「森の癒やし活用事業」の枠組みで、
スタッフ二人分の人件費の補助を受けている。

 今年の交流フォーラムの参加者らに、
学力面の心配について聞いてみると
「字をほとんど知らない状態で、
森のようちえんを卒業して小学校に入っても、
頑張ればすぐに他の子に追いつける」といった声が多かった。
ただ、「専業主婦でないと子どもを預けにくい」という意見も。
森のようちえんは母親が関わる度合いが強いからだ。

 活動内容や理念をホームページや
ブログで説明しているグループが多いので、
親はそれらをよく読んで検討するのがよさそうだ。
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