とうもろこし畑の迷路(合志市)


朝日新聞
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 合志市の国道を車で通る時、
道路脇にある「めいろ」と書かれた看板が気になっていた。
矢印に導かれていくと牧場が現れ、
その先にとうもろこし畑の迷路が広がっていた。
なぜ牧場に迷路? 地元の子どもたちと挑戦しながらひもといた。

  6日午前、体験学習で集まった
市立西合志東小学校2年の児童約60人が
高さ2メートル50センチ、広さサッカーコート1面分の
とうもろこし畑の迷路に入った。
ついて行くと中は葉っぱのトンネル。
体に当たる葉を感じながら進むと、
次第に方向感覚を失った。

  「むずかしー」と叫ぶ児童と一緒に、
息を切らせながら約15分でゴール。
いつまでもゴールできず、
あきらめて入り口から返ってくる子もいた。

  迷路は牧場「オオヤブデイリーファーム」を経営する
大藪正勝さん(60)と妻の真裕美さん(60)が
約20年前に作り始めた。
当時、近所は新興住宅が増え、
酪農家と住民との間に壁ができていた。
とうもろこし畑にふんを加工した肥料をまくと臭いと言われ、
畑にごみを捨てる人もいた。

  長女の美和さん(31)は同小6年の時、いじめを受けた。
家が酪農をしていたことで「くさい、汚い」と友達に言われた。
学級会で美和さんが「うちは牧場だけん。
お父さんが誇りを持っている仕事を侮辱しないで」と訴え、
教諭が真裕美さんに伝えた。

  「酪農の仕事を知れば変わるはず。牧場を開放しよう」と
真裕美さんは考えた。
思いついたのが、とうもろこし畑を迷路にすること。
図面作りや刈り取りは夫婦でやった。
イベントを開いて牛の乳搾りを体験してもらい、
酪農を身近に感じてもらう工夫もした。

  効果は抜群だった。嫌がらせはやみ、
牧場は子どもの遊び場に。
「今年はいつから迷路やるの」との声に押され、
毎年9月ごろから迷路を作るようになった。
6年前から、2代目の長男裕介さん(34)が迷路を作る。
難易度が上がり、出られずに泣く子も。
テーマは「大人を迷わせ、子どもを泣かす」だ。

  牧場の牛は迷路に使ったとうもろこしを食べ、
ふんは肥料にして畑にまく。
そこにまたとうもろこし畑の迷路ができる。
楽しませながら生命の循環も教えている。
牛乳は濃厚なソフトクリームに加工され、
真裕美さんが営む近くの店で食べられる。

  子どもから「牛は食べられてかわいそう」
と言われることがある。
真裕美さんは「残して捨てられる時が
一番悲しいんじゃないかな」。
学習後、学校の教諭から「給食の残飯が減った」
「牛乳を残さなくなった」との声も届くという。

  体験学習の最後、児童が
「牧場も迷路も楽しかった。また来てもいいですか」と聞いた。
同小は牧場近くにあるが、
ほとんどの児童が来たことがなかった。
真裕美さんは「いつでも来ていいですよ」と
笑顔で答えていた。

  とうもろこしは20日ごろ収穫予定。
それまで迷路は24時間、無料開放している。(山本恭介)
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