【高知県】幼稚園、避難へ独自基準


朝日新聞
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 大雨や地震に伴って発生する崖崩れや土石流などの土砂災害。
県内の危険箇所は1万8千カ所に及び、
砂防ダムなどのハード対策が追いつかない中、
独自に避難マニュアルを作って
訓練を重ねている幼稚園が南国市にある。

 「裏の山が崩れて土や水が流れてきます。避難して下さい」。
10月29日午前9時半。南国市宍崎の市立たちばな幼稚園で、
館内放送が流れた。
保育室や園庭にいた園児96人が一斉にホールに移動した。

 土砂災害を想定した訓練は今年度になって2回目。
園児たちはホールで、ヘルメットの装着も練習した。
同園は山に囲まれた谷沿いにあり、
田村由香園長は園児に「砂場で作る山も
水をかければ崩れますよね。
裏の山も雨がいっぱい降ったら崩れるかもしれません」と説明した。

 同園が土砂災害の対策を始めたのは2009年。
県が指定した土砂災害警戒区域のハザードマップで、
園庭や保育室など施設の大半が
対象区域に含まれていたためだった。

 どのように対応をすればよいのか――。
市に尋ねてもマニュアルはなかった。
ならば自分たちで作ろうと、
同年11月にマニュアル策定委員会を発足。
市や県の防災担当者ら5人が加わるなど行政も協力し、
5回にわたって討議した。
10年6月に独自のマニュアルを策定した。

 内容は、気象台から大雨や洪水警報、
土砂災害警戒情報が出された場合、
園児が登園前であれば自宅待機とし、
登園後の場合は通園路の状況を見た上で
速やかに帰宅させる。
従来は大雨や洪水警報が出ても
台風でない場合は特に対応を取ってこなかったが、
それを改めた。
園外に避難する場合は、
市バスや教育委員会の車で近くの
公民館などに逃げるルールも定めた。

 同園の北西約3キロの集落では
1998年に民家の裏山が崩れて
子供2人が亡くなる災害が起きており、
職員は土砂災害の怖さを身近に感じているという。

 南国市は、土砂災害危険箇所389カ所に対し、
警戒区域の指定は433カ所に上るなど
全34市町村で指定が特に進んでいる。
それでも市危機管理課によると、
同幼稚園のように独自にマニュアルの策定や
訓練に取り組む例はほかに聞いたことがなく、
県も先進的な取り組みの一つとして注目している。

 同幼稚園の学習会に講師として招かれた
高知大の横山俊治教授(斜面災害)によると、
高知の山は堅い地質だが、
過去に繰り返し起きている南海地震で
亀裂が入っているうえ雨も多く、
土砂災害の発生のおそれは全域であるという。

 横山教授は「土砂対策は、
行政がハザードマップを作って
住民に配って終わりがちだが、
受け取った住民側が行政や専門家を巻き込みながら
どう避難するかを主体的に考えることが重要だ。
その意味で、たちばな幼稚園の取り組みは、
よいモデルとなる」と話している。
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