教科書:デジタル化の波 重いかばんから解放?


毎日jp
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 「教科書」=「紙の本」が変わろうとしている。
デジタル教科書の登場だ。
インターネットの普及(ふきゅう)で、
手紙の多くは電子メールになり、
仕事の書類もパソコンで作成するようになった。
当然ながら、デジタル化の流れは教科書にも押し寄せている。
ランドセルやかばんに教科書を詰め込んだ時代から、
将来はタブレット端末(たんまつ)を小脇に抱え、
あるいは何も持たずに登校する
子供たちの姿が当たり前になるかもしれない。【岡礼子】
 ◇タブレット型端末操作し授業 導入コスト、著作権など課題も

 「アルファベットを探してみよう。何があるかな?」

 茨城県つくば市立春日(かすが)小の
鈴木はる代先生(38)が子供たちに問いかけた。
電子黒板に英語の教材を映し、
さし絵の中に隠されたアルファベットを探す授業。
大きな画面は子供にも見やすく、発言も活発だ。
音声の出るデジタル教科書は外国語学習にとても便利だ。

 紙の教科書の内容をソフトにして
画面に表示したものがデジタル教科書だ。
一部の教科書会社が先生向けの
デジタル教科書を開発したのが05年ごろ。
09年に補正(ほせい)予算で全国の学校に
電子黒板が導入され、コンピューター操作(そうさ)に
詳しくなくても、先生がすぐに使える教材として普及が進んだ。
そして今、導入されつつあるのが
タブレット型端末に表示して生徒が使うデジタル教科書だ。

 総務、文部科学両省の実験校として
全国20小中学校で導入されており、
佐賀県、大阪市でも来年度から導入予定だ。

 教科書は法律(教科書の発行に関する臨時措置(そち)法)で
「図書」と決まっている。
内容が同じデジタルデータでも、
法律や検定(けんてい)制度を変更しないと教科書とは言えない。
今のままでは小中学校で無償(むしょう)提供されないため、
導入するには、教科書(ソフト)と端末の価格を
誰が負担するかも課題になる。
今後、持ち歩ける端末を各家庭で1人1台持つようになれば、
教科書ソフトのみ販売することも考えられる。
だが、その場合はどの端末でも内容を表示できる
ソフトを作る必要がある。今はまだ難しい。

 「デジタル教科書は、著作権(ちょさくけん)料の
軽減(けいげん)が受けられない。
動画の視聴機能(しちょうきのう)をつければ
使用料が発生する」と大手教科書会社の担当者は現状を説明する。
辞書や問題集も加えて付加価値(ふかかち)をつければ、
さらに費用がかさむ。
法的に教科書として認められれば、
著作権料の軽減が見込め、
利用者数が予測できることで開発もしやすくなる。
だが、検定制度や価格など課題は多い。

 将来、教科書はどのようになる可能性があるのか。

 デジタル教科書を読みながら、
分からない言葉に線を引くと自動的に単語帳ができる
▽問題を解いて提出する
▽宿題をしていて、同時に教科書の
同じページを開いている友達とチャット(おしゃべり)をする、
といった機能は、すでに実現可能だ。

 紙の教科書とデジタルの良さを生かす試みがある。
東京書籍はAR(拡張現実(かくちょうげんじつ))技術を使って、
資料集や副読本(ふくどくほん)と
デジタルデータを連携させる方法を模索(もさく)している。
ARは、スマートフォンなどの端末を
あらかじめ登録したマークにかざすと、
自動的にインターネットに接続して
動画が再生される仕掛けだ。
理科の資料集にマークを印刷し、
惑星(わくせい)をアニメーションで動かすこともできる。
東京書籍ICT事業本部の東井尊(とおいたける)さんは
「本には一覧(いちらん)性があり
書き込みをしやすい長所があるが、
掲載量に制約(せいやく)がある。
ARは本とデジタルの良さをつなぐものだ」と期待する。

 同社がバンダイナムコゲームスの協力で出版した
大人向け英語教科書
「ミライ系NEW HORIZONでもう一度英語をやってみる」
では、各ページのマークにスマートフォンをかざすと、
登場人物が英語で会話をするアニメーションが流れる。
読み手の興味を引く材料になるのだ。

 デジタル教科書になると、
子供たちが重いかばんから解放される。
教科書や辞書、資料集が、
1台の端末に収まるからだ。
もっと紙に近い、やわらかくて軽いディスプレーが
開発されている可能性もある。
データをネットワーク上に保存すれば、
何も持たずに登校しているかもしれない。
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