【高知県】保育所・幼稚園 浸水域に156施設


朝日新聞
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 南海地震に備え、幼い命を預かる保育所や幼稚園の
高台移転を求める声が、保護者らを中心にあがり始めた。
東日本大震災の津波被害を目のあたりにし、
南海トラフの巨大地震の新想定では浸水域が拡大。
高台移転は、より現実味を帯びた選択肢になりつつある。

 東日本大震災で被災した宮城県山元町立東保育所では、
津波で園児3人が命を落とした。
海岸からの距離は約1・5キロ。
保育所は園児を車10台に分乗させて避難させようとしたが、
うち7台が津波にのまれた。

 乳幼児の津波避難は、南海地震対策でも
大きな課題のひとつだ。

 県によると、南海トラフの巨大地震の新想定で、
保育所と幼稚園など156施設が浸水域に入った。
乳幼児の避難は職員だけでは限界があり、
保護者からは高台移転を望む声があがる。
そこで県は「高台移転のための準備を加速させる」として、
今年9月の補正予算で移転候補地の測量などをする際の
補助金として500万円を計上。
市町村負担を減らし、高台移転を促したい考えだ。

 高台移転に向けた議論は各地でみられるようになった。
中土佐町では有識者らでつくる審議委員会が
久礼保育所を高台に移す案で一致。土佐清水市では
今年4月に園長と保護者会長を交えた検討委員会を設置。
その中で、浸水域の清水、旭、浦尻の3保育園を統合して
高台移転する案が決まり、8日午後、市長に提言する。
宿毛市では行政改革の一環で小筑紫とみなみの
2保育園を統合し、高台移転させる案がある。

 だがこうした動きはまだ始まったばかり。
県幼保支援課が9月までに各市町村に問い合わせたところ、
高台移転を検討している保育園は4市町の10園。
移転先や移転時期などが
具体的に決まっている計画はまだないという。


 ■費用・用地など 高いハードル


 高台移転には財政面はもちろん、
土地の確保、保護者や地区の同意など、
クリアすべき課題は多い。

 9月20日、宿毛市役所で咸陽(かん・よう)保育園の
保護者ら約10人と沖本年男市長との意見交換会があった。
保育園は海岸から1キロ弱の距離で、標高2・6メートル。
新想定によると、付近は最大10メートル超が浸水する。
保護者らは今年1月と3月の2度にわたり、
市に高台移転を求める要望書を提出した。

 4歳になる男児を預ける山本里佳さん(37)は
「仕事があるので、何かあってもすぐ駆けつけてあげられない」
と強い口調で訴えた。
「何かあってもすぐに子供の所にいけない時、
そこが安全な場所だということがすごく重要なんです」

 沖本市長は「高台移転は当然」とする一方で、
「一度にすべての地域に手を付けられないのも事実」と説明する。
同市の小筑紫とみなみの2保育園の統合移転先は市有地だが、
それでも事業費は数億円規模を見込む。
「まずは近くに早急に避難道を整備する」と理解を求めた。

 新想定で最大34メートルの津波高となった黒潮町は、
保育所や学校施設をできるだけ早く
浸水域外へ移転させる方針を掲げる。
だが最大16・9メートルが浸水するとされた
佐賀保育所は約4億円をかけて2010年に新築したばかりだ。
起債償還も今後10年近くかかるという。

 同町の植田壮副町長は10月24日、
現地視察に訪れた下地幹郎防災相に対し、
「高台移転をすれば二重ローンを抱えることになり、
町財政は破綻(は・たん)する」と訴え、
保育所や小中学校を高台移転するための
財政特例措置の制定を要望した。

 県も、国に対して現行制度の要件緩和などの
要望を続けている。
被災地や災害危険区域の住民の移転を促す国の
「防災集団移転促進事業」で、
現行は住宅のみに限られている用地取得造成費を
保育所も対象とすることなどを求める。(中島嘉克)
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