親のがん死・自殺で子供の自傷・自殺リスク増加


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スウェーデンの2研究

 幼少~若年期の親との死別は、
子供の心に大きな影響を与えることが指摘されている。
最近、米医学誌「JAMA」の関連誌に、
幼少期の親のがんによる死亡あるいは自殺が
その子供に与える影響を検討した2つの研究が、
スウェーデンから相次いで報告された。
親のがん死は子供の自傷行為、
親の自殺は子供の自殺企図(実際に自殺を企てること)
のリスクを高めるという。


10歳代で親ががん死、子供の自傷行為リスクは2倍に
 スウェーデン・カロリンスカ研究所のTove Bylund Grenklo氏らは、
10歳代でがんにより親を失った子供は、
そうでない子供に比べて自傷行為の経験率が
2倍高いとの研究結果を、12月3日発行の
米医学誌「Archives of Pediatrics & Adolescent Medicine」
電子版)に報告した。

 Grenklo氏らは、13~16歳のとき(2000~2003年)に
親をがんで亡くしたスウェーデンの子供1,272人に
アンケートを送付し、回答の得られた
952人(回答率74.8%)を対象に検討。
年齢や性別、居住地などを一致させた451人のうち
回答のあった330人(同78.4%)を対照群として比較した。

 その結果、2009年および2010年の時点で、
親をがんで亡くした子供の群では
「自傷行為をしたことがある」と答えた割合が120人(19.5%)、
対照群では35人(10.6%)。
親をがんで亡くした群の自傷行為リスクは2倍に上った。

 いじめや性的・肉体的虐待の経験などの
影響を除外しても2.3倍と依然として高く、
自殺企図リスクも1.6倍あった。

 以上の結果から、Grenklo氏らは
「親をがんで亡くした子供の自傷行為リスクは、
そうでない子供に比べて2倍に上昇しており、
考え得る要因を補正しても同様の結果だった」と結論。
その上で、こうしたリスクの高いグループを
見いだす方法や幅広いケアなどの対策が
必要ではないかと提言している。

親の自殺による子供の自殺企図リスク、
死別時年齢で大きな違い

 米ジョンズホプキンス大学のS. Janet Kuramoto氏らは、
同じくスウェーデンの複数の統計システムを利用した
研究の結果を、12月10日発行の
米医学誌「Archives of General Psychiatry」(電子版)に報告した。

 幼少期に親の自殺を経験した子がその後、
自殺企図により入院するリスクが高まることが
これまでの研究で報告されていたが、
Kuramoto氏らは、死別時の年齢により
そのリスクがどう異なるのかを検討した。

 対象は、1973~2003年に、スウェーデンで
自身が25歳以前に親が自殺した子供2万6,096人、
同様に親が不慮の事故で死亡した子供3万2,395人。
親と死別した年齢によって0~5歳、6~12歳、
13~17歳、18~24歳に分け、
死別からその後の自殺企図による
入院リスクの推移を解析した。

 0~5歳、6~12歳で親と死別した場合、
死因が自殺か不慮の事故にかかわらず、
その後5年間(あるいは10歳以降)の自殺企図による
入院リスクの上昇が見られた。
0~5歳では、同様の傾向が10年以上持続していたという。
一方、13~17歳、18~24歳では
死因にかかわらず親の死から1~2年でリスクが急上昇し、
その後は次第に減っていくなど、
0~12歳の場合と異なっていた。

 また、親の自殺により死別した年齢が
0~5歳、6~12歳、13~17歳の場合では、
不慮の事故で死亡した場合に比べ
自殺企図による入院時期が早まる傾向が見られた。

 以上の結果から、Kuramoto氏らは
「親と死別した年齢により、その子供の自殺企図による
入院リスクは異なっていた」と結論。
特に、13歳以降では親の死から1~2年時点、
それ以前の年齢ではその後の数十年が
危機的な期間であり、自殺企図リスクの観察や介入が
必要なことが示唆されたと述べている。
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