子供の予防接種:Q&A 保護者が冷静にリスク評価を


毎日jp
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 ◇統計では接種しない危険高い 体調や基礎疾患に注意

 日本脳炎の予防接種を受けた子供の死亡例が報告され、
保護者の不安が高まっている。
予防接種の安全性や注意点をまとめた。【田村佳子】
 ◇2件の死亡例報告

 Q 日本脳炎ワクチンのせいで今年死亡した子がいるの?

 A 9歳未満の子供が接種7日後に
急性脳症の疑いで死亡した事例と、
10歳男児が接種直後に死亡した事例について、
厚生科学審議会の日本脳炎に関する小委員会が
10月、状況を確認しました。

 前者のケースについて、委員会の専門家6人からは
「(ワクチンが原因とするには)時間的に
発症まで早過ぎるように思うが、否定を確定するものではない」
「接種による脳炎は否定的」など
因果関係に否定的な意見が多く出ました。
2人とも基礎疾患がありましたが、疾患が重い場合、
接種による発熱がきっかけで体調が悪化し、
重症化した可能性は「臨床的には考えやすい」
との意見もありました。

 後者のケースは、所見から心臓に
問題があった可能性があり、
心臓への副作用のある薬を服用していたため、
接種の痛みや恐怖で心臓に異常が起きたとの
見方が圧倒的でした。
しかし、いずれも因果関係の確定には
詳細な調査が必要とされました。
委員会の報告内容は、厚生労働省のサイトで見られます。
 ◇副作用の発症確率

 Q 副作用はどれくらいあるの?

 A 因果関係の分からないものも含めたデータでは、
日本脳炎の場合、09年以降に新ワクチンが
約1445万回接種され、21人が
脳炎・脳症・急性散在性脳脊髄(せきずい)炎(ADEM)を発症しました。
およそ69万回に1回の計算です。
一方、ウイルスに感染した場合に脳炎を発症する確率は
100〜1000人に1人、
発症者の約2割が死亡するとされています。
国立感染症研究所は、もし予防接種を中止すれば、
日本脳炎の発症リスクは西日本で934〜9337人に1人、
東日本で1万3600〜約14万人に1人と試算しています。

 はしかで脳炎を起こす頻度は、
ワクチン接種が100万〜150万人に1人以下、
ウイルス感染だと1000人に2人で、
ワクチンの方が圧倒的に低いと言えます。
おたふく風邪の場合、現在国内で使われている
ワクチンで無菌性髄膜炎を起こす頻度は
2000〜3000人に1人と高いですが、
ウイルス感染の場合は10〜100人に1人に上り、
治療不能の難聴になる恐れもあります。
 ◇地域や社会守る

 Q 副作用が心配で、接種を迷います。

 A 日本赤十字社医療センター小児科の
薗部友良顧問は「『うちの子に限って
ウイルスに感染しないのでは』と考えて
接種を避けたい気持ちは分かるが、
そう言えないことは統計を見れば分かる。
ワクチンはゼロリスクではないが、
受けなければ受けないほど現実のリスクは高まる」と訴えています。
接種率が高まれば、地域でその病気が広まりにくくなり、
社会全体が守られる利点もあります。

 しかし、日本の予防接種は強制ではありません。
最終的には保護者が冷静にリスクを評価し決めればよいのです。
 ◇体調悪いなら見送る

 Q できるだけ安全に接種を受けるためには?

 A 前夜からおなかやのどが痛いなど、
体調の崩し始めは見送った方が無難です。
ワクチンの副作用は風邪などで誘発されないといいますが、
子供の病気は急変します。
変化の要因が増えると対応の遅れにつながります。

 予診票に心配事を書いておくのも大切。
岡部信彦・川崎市衛生研究所長は
「予診票は医師にヒントを与え、
丁寧に診察してもらえるので、ためらわないで。
疑問があれば末尾の『質問がありますか』
の欄に丸をしましょう」と勧めます。
また、接種後30分は安静にし、万一、
急性アレルギー反応のアナフィラキシーや
痛みによるショック症状が起きた場合に
すぐ医師にかかれる所にいましょう。
 ◇主治医によく相談を

 Q 基礎疾患やアレルギーのある場合は?

 A 水ぼうそうワクチンは元々、
水ぼうそうになると命に関わる白血病患者などのために
開発されました。
同様に、基礎疾患がある人は病気にかかると
悪化する恐れもあり、予防接種は重要です。
ただ、接種によるリスクも健康な子供より高くなります。
必ず主治医に相談し、接種計画を立てましょう。

 食物アレルギーがあると、アナフィラキシーが心配ですが、
岡部所長は「自己判断せず、
予防接種かアレルギーに詳しい医師に相談を」と助言します。
 ◇分かりやすい情報を

 Q ワクチンの安全性を確認する仕組みは?

 A 3種混合やポリオなど定期接種ワクチンについては、
接種後の発熱や脳炎など基準に当てはまる
体調異変は全て国に報告する制度があります。
集計結果は厚労省が公表し、
国の検討会がこれらを基に影響を評価します。

 市民団体「ワクチントーク全国」事務局の
青野典子さんは「国はかなり情報開示しているが、
まとまっておらず、一般の保護者が
情報を把握するのは困難。
また、副作用があった場合の申請や補償の仕組みも、
事前に保護者に説明すべきだ」と指摘します。
乳幼児は元々突然死や体調変化が多いだけに、
副作用の特定は困難といわれますが、
青野さんは「だからこそ、もっと早急、
詳細に検証するシステムを」と求めます。
信頼性を高めるには国のきめ細やかな対応が必要です。
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