福島の子ども詩、英訳…米国出身講師ら


YOMIURI ONLINE
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「元気な声」ネットで世界へ

 福島県郡山市で55年続く児童詩誌「青い窓」に
寄せられた作品を英訳する作業が、
ボランティアらの手で進められている。

 「福島の子どもたちの元気な声を世界に届けたい」と、
英訳詩のパネル展が同市内で開かれているほか、
同誌やインターネットのサイトなどでも作品を公開している。

 「青い窓」は、同市内の老舗菓子店が
子どもの詩を飾るウインドーを設けたのが始まりで、
全盲の詩人、佐藤浩さん(2008年に死去)が主宰。
現在年6回発刊されている詩誌には、
福島県内の子どもの詩を中心に掲載している。

 「青い窓から世界の窓へ」と銘打った今回のプロジェクトは、
米国出身で滋賀県米原市の
英語講師ジェイムズ・ホーヴィーさん(49)、
妻の清水千香子さん(45)が提案した。
2人が昨春、知人の結婚式で同誌に掲載された
詩の朗読を聞き、感動したのがきっかけ。
「福島の子どもの思いを世界に広げられれば」と知人らに呼びかけ、
東京農大准教授(英文学)の寺本明子さん(52)らと
協力して翻訳をスタートさせた。

 同誌の作品集は多数刊行されているが、翻訳は初めてという。
「子どもの言葉を訳すのは困難」という
佐藤さんの考えで見送ってきたが、
「東日本大震災を受け、福島の子どもたちが
元気でいることを広く発信したいと考えた」と、
同誌事務局の橋本陽子さん。

 同誌には震災後、福島県内の小学校などから
約500編が寄せられた。
直接震災や原発事故に触れた詩は少数で、
「家族と過ごせる幸せを描いた詩が目立つ」という。

 震災で同県二本松市に移転した浪江町立浪江小からは
昨秋、初めて数編が送られてきた。
「ようやく明るい詩が書けるようになりました」
と添え書きしたのは、武内弘子教諭(48)。
現在の児童は30人。
「震災直後は、生や死に触れた詩を書く子もいた」と振り返る。

 ホーヴィーさんらはすでに約60編を英訳。
同誌のサイトなどで順次公開しているが、
ほのぼのとした内容が多い。

 同県伊達市の小1男子の詩「はやく食べたい」は、
母の作った弁当を食べる楽しみをつづった。
英訳では「bento」という言葉もそのまま使い、
「たべたくてたまらない」は
「待ちきれない(I can’t wait for lunch)」、
「はやくたべたい」は「お昼ご飯まだ(Is it lunch yet?)」と、
かわいらしい響きに。
一方、南相馬市から郡山市に避難した小6男子の「夢」は、
震災を受け「役に立てる人になりたい
(I want to be someone who helps people)」
と決意を記した。

 「心情を素直に表した詩が多く、
子どもらしい英語を心がけた」とホーヴィーさん。
「今後は、様々な国の人が読めるよう
スマートフォンのアプリでも配信したい」と話す。

 投稿作品の一部が英訳された伊達市立梁川小は、
今も仮設校舎に移転中。
柳沼美恵子教諭(45)は
「大変な経験をしても明るい気持ちを忘れない
子どもの言葉は、大人の励みにもなる」と喜ぶ。

 郡山市の展示スペース「青い窓ポケットガーデン」
(024・925・6451)では約10編が日英2か国語で、
イラストレーター、さかくらりまさんの絵と共に
パネル展示されている。2月28日まで。
(編集委員 古沢由紀子)
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