【静岡】生の尊さ伝える性教育 県内の児童養護施設で


中日新聞
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 県内の児童養護施設で、
職員が保健師とともに子どもたちへの性教育を続けている。
集団生活で被害者にも加害者にも
ならないようにすることが狙いだ。
だが、親から十分な愛情を受けずに育った
子どもたちが自分を「大事な存在」と思えるようになることが
前提にあり、最大の課題でもある。

 浜松市南区の児童養護施設「清明寮」。
入所する四~六歳の十二人が行儀よく座る。
職員が一人の子のおしりを触ったり、
口に手をくっつけたりする。「これ、されたらどう?」

 「嫌な気持ち」「悔しい」
「いや!やめてって言う」と子どもたち。

 学ぶのは体への触れ方のいい例、悪い例と、
水着で隠れる部分を触っていいのは自分だけ、ということ。

 「悪いタッチをするのはあなたを大事に思ってないから。
怖いときは、逃げて先生に言って」と職員は教える。

 清明寮では八年前から、年中児から十八歳までを対象に
性教育の会を続けている。
幼児には年三回開き、絵本や手づくりの紙芝居を使って、
この二つだけを繰り返し教える。
徐々に幼児でも裸でいることや
異性の前で着替えることに抵抗感が出たという。

 児童相談所の保健師の声掛けがきっかけで、
県内では同様に賛同した児童養護施設九カ所と
児童福祉施設五カ所で取り組まれている。

 一方で特有の課題もある。
「自分のいいところはないとはっきり言ったり、
自己肯定感がない子が多い」と当初から
性教育に関わる清明寮職員の鈴木五子さん(49)は言う。
親から気にされずに育ち、
自分のことをどうでもいいと感じている子どもたちは少なくない。
だから言葉で「自分の体を大事にして」とだけ言っても
「ざるのように流れてしまう」。

 そのため、学習だけでなく、普段の生活の中で
いいところを意識的に褒めたり、
誕生日にケーキで祝って好きなところに遊びに行ったり、
家庭に近い環境を目指すことも同時に続けている。
「目には見えないから難しいけれど、
私たちから大切にされていると感じてほしい」と鈴木さんは話す。

 県中央児童相談所(静岡市駿河区)の
保健師秋山美由紀さん(57)は
「子どもたちは多かれ少なかれ、
見捨てられたと思って施設にくる。
いくら大事と言っても『そういう人生じゃなかった』
と言われることもある」と子どもたちが抱える
虐待の傷を訴える。

 性教育を通じて、自分の命が大切だということや
相手も思いやる気持ちを早くに育て、
虐待の連鎖を断ち切りたいと願っている。
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