園児に体験語り命の尊さ伝える 灘の保育士


YOMIURI ONLINE
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 阪神大震災で祖母を亡くした神戸市灘区の
保育士内倉優さん(37)が、
運営する保育所に通う子どもたちに震災体験を初めて語った。
大好きだった祖母の死を受け入れられなかったが、
祖母の話を通じて、
子どもたちに命の尊さを伝えようと決心した。
震災から18年となる17日には、2人の子を連れ、
中央区の東遊園地を訪れる。(南部さやか)

 内倉さんは灘区の自宅で被災。
両親と弟は無事だったが、
近くの祖父母宅は1階が押しつぶされ、
祖母の大塚嘉寿代さん(当時74歳)が亡くなった。

 「おばあちゃんっ子」だった内倉さんは、
両親が共働きだったこともあり、
嘉寿代さんの元に足しげく通った。
肉と野菜がたっぷり入った手作りの
ケチャップシチューの味は今でも忘れられない。
「もう一度食べたい」と両親にせがんだが、
味は再現できなかった。

 祖母の死はなかなか受け入れられなかった。
祖母を失った深い悲しみで胸がいっぱいになるのが嫌で、
震災のニュースも意識して避けてきた。

 だが、震災から十数年が過ぎた頃から
気持ちに変化が訪れた。
2007年に、祖母にも語った将来の夢、
保育士として独立し、「保育所Father&Mother」を設立。
その後、結婚して、長女(3)が生まれると、
「おばあちゃんに家族を見せたい」と思い、
震災から15年目で初めて東遊園地を訪れた。
「名前が刻まれた銘板に手を触れると、
おばあちゃんの近くにいるようだった」

 昨年には、長男(10か月)も誕生し、
子どもには祖母の思い出を話すようになった。
もちろん、祖母の命を奪った震災についても。

 東北を襲った東日本大震災被災地の映像に
衝撃を受け、命の大切さを子どもたちに伝えたいと思い立ち、
今まで表に出してこなかった自分の体験を話すことにした。

 15日には、0~3歳の園児約10人を前に初めて語った。
当時の写真を見せ、できるだけ易しい言葉を選びながら話した。

 「地震では、家の壁がはがれたり、
ぺっちゃんこになったりします」

 「家が壊れて、先生のおばあちゃんは死んでしまいました」

 体験を語るときに避けられない祖母の死。
時折つらい思いが頭をよぎったが、話をやめることはなかった。
避難訓練も合わせて行った。

 「子どもたちが理解していなくても、
幼い時から教えておくことが大切だと思う。
何となくでも、覚えていてくれたらうれしい」
(2013年1月17日 読売新聞)
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