「0歳児保育」見直す動き


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高コスト、育休切り上げ増加

 待機児童が多い大都市で、
認可保育所の0歳児保育のあり方を
見直す動きが注目されている。

 本来1年間はとれる育児休業を早めに切り上げ、
入所しやすい0歳から預ける親が増えているためだ。
人手がかかり財政負担の大きい0歳児保育を縮小し、
より需要の高い1歳児に定員を
振り替える自治体も出てきた。

 「育児休業取得率が全国で約9割に上る中、
入所希望が集中する1歳児の定員を増やし、
限られた財源を有効に使いたい」。
政府の子育て施策検討会の委員を務めてきた
東京都三鷹市の清原慶子市長は話す。

 1956年から0歳児保育を始めた同市では
来年度、0歳児を受け入れる市立保育所15園中2園で
0歳児の募集を停止し、経費や設備を
1、2歳児の定員の拡充に充てる。

 同市の今年4月時点の待機児童は128人で、
9割近くを1、2歳児が占めた。
育児休業法では、子どもが1歳になるまで休業でき、
1年半~2年休める企業もあるためとみられる。
一方、0歳児は、地域によっては欠員が出た。
全国の待機児童は同時点で約2万5000人で、
約7割を1、2歳児が占める。

 同市で昨年、0歳児を預ける保護者に
アンケートをしたところ、
0歳から預けた理由として約半数が
「1歳からに比べ入りやすいと思った」と答えた。
「育休期間を短縮して職場復帰している実態があり、
保護者の需要に適切に対応する必要があると考えた」
と同市の担当者は話す。

 ただ0歳児保育は、職場や家計の事情などで
必要な家庭の要望に応えるため、
今後も公私立保育所で継続するという。
乳児対象の保育ママ制度や家庭的な小規模保育、
在宅で子育てする人の支援も充実させていく方針だ。

 東京都社会福祉協議会の調査でも、
都内の認可保育所利用者約3200人の
育休取得期間は平均9か月で、
取得可能だった期間の平均17か月を大きく下回る。
休業を切り上げた理由として約半数が
「1歳での入所が難しい」ことを挙げ、
「職場の状況」「家計の問題」を上回った。

 保育所整備を進めてきた都市部の自治体には、
人手や経費のかかる乳児保育への負担感が広がっている。
都内のある区では、私立保育所の新設時に
「無理して0歳児保育をしなくていい」と説明しているという。
だが、経営のため、補助金の手厚い0歳児保育を
実施したがる私立保育所が多く、
「1歳からの入所が難しくなっている」と担当者は打ち明ける。
1歳児の定員拡充必要に

 社会保障・税一体改革で、
民主、自民、公明の3党は今夏、
消費税増税分から7000億円を
保育所整備など子育て支援に充てることで合意した。
このため、新政権が発足しても
子育て支援政策に大きな変更はないとの見方が強い。

 ただ、今回の衆院選で自民党は
待機児童解消などに加え、
「0歳児に親が寄り添って育てることのできる環境の整備」
を公約に盛り込んだ。
育休制度の推進などを念頭に置いたものというが、
同党は「子育ての第一義的責任は家庭で持つ」
を基本としており、
「社会で子どもを支える」としてきた
民主党の理念とは異なる。

 このため、専門家の間には、
今後、三鷹市のような0歳児保育抑制の動きが
加速するのではないかとの見方もある。
白梅学園大教授(保育学)の無藤隆さんによると、
育休制度や休業中の所得保障が整う北欧などでは、
1歳までは家庭でみるのが基本という。
「0歳児に長時間の良質な集団保育を行うのは
コストがかかる。保育ママなどの
家庭的環境での保育による対応や、
保育所の補助金制度などを工夫し
1歳児の定員を拡充することも必要だ」と指摘する。
(編集委員 古沢由紀子)

 0歳児保育 4月1日時点で1歳未満の子が対象。
国の基準で3人につき保育士1人の配置が必要だが、
1、2歳児は6人につき保育士1人。
東京都内の認可保育所の場合、
0歳児1人あたりの公費支出は月40万円程度に上り、
1、2歳児の約2倍。
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