児童養護施設:暮らす子の自立支援 退所後の生活援助なく 1人暮らし練習、住宅提供も


毎日jp
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 虐待を受けるなどの理由で親と暮らせず、
児童養護施設で育つ子どもは全国で約3万人に上る。
高校を卒業して退所した後は62・7%
(05年度、全国児童養護施設協議会調べ)が
1人暮らしとなるが、生活費に困っても頼る親はいない。
社会で生き抜くためには、
退所前に将来設計を明確に描かなければならない。
彼らを支える「自立支援」について、
東京と千葉の取り組みを取材した。【榊真理子】

 児童養護施設「二葉むさしが丘学園」(東京都小平市)には、
退所を控えた子どもが1人暮らしの練習をする
「自活訓練棟」がある。
昨年11月、ここで2週間暮らした高校3年の女子は
「お金の管理が大変だった」と振り返る。
食費にあてられるのは1日1050円。
やりくりして食材を買い、肉じゃがやドリアを作った。

 同園で訓練の決まりや書類を作るなど、
包括的立場で自立支援の体制を整えるのが
「自立支援コーディネーター」の鈴木章浩さんだ。
この女子を担当していた男性職員(26)は
「献立の問題点など気づかない点を、
鈴木さんが教えてくれたので助かった」と話す。

 訓練後の反省会では、担当職員と鈴木さんと
3人で将来の見通しを話し合った。
「鈴木さんに、退所後の資金計画を
厳しく指摘してもらった」と女子。
「退所して専門学校へ進学した後は、
学校とバイトの繰り返しになると覚悟しました」。
訓練を経て、意識が高まったようだ。

 自立支援コーディネーターは、
東京都が12年度から始めた取り組みで、
希望した37施設に配置している。
国は11年7月にまとめた「社会的養護の課題と将来像」で、
「児童養護施設に自立支援担当職員を置く」としたが、
国の予算は1施設年間約200万円で、
十分な支援は難しい。
都は常勤職員を配置できるよう、
1施設に約530万円を独自に補助している。

 職務は、職場体験の受け入れ先の開拓
▽進学希望の子どもが使える奨学金制度の把握
▽退所後、遠方に住む子どものケア−−など幅広い。
鈴木さんは「NPOなどの支援組織や
他施設のコーディネーターと連携しながら
取り組みたい」と語る。

     *

 千葉県では11年8月、児童養護施設などを運営する
7法人が30万円ずつを出資して、
協同組合「千葉県若人自立支援機構」を作った。
退所者への住宅提供や、生活資金の貸し付けを行う。
専務理事の水鳥川(みどりかわ)洋子さんは
「施設を出る子どもの半数は、
貯金が10万円以下しかなく、すぐ生活に行き詰まってしまう。
施設ごとの対応では限界があり、
まとまって支える仕組みを作った」と話す。

 組合が用意する住宅は、賃貸契約時の保証人がいらず、
家賃は月2万5000円。
加盟する房総双葉学園(千葉市)の
小木曽宏施設長は「これまで仕事と住まいを失った子は、
とりあえず出身の施設に戻ってもらうしかなかった。
安く住居を提供でき、本人も次に向かって切り替えができる」と話す。
組合は、子どもに生活設計の講座を開いたり、
職員からの法律相談にも応じる。
「自立につまずいても、少しの援助があれば
救える子どもも多い。彼らに寄り添いたい」
 ◇相談窓口求める声

 退所した子どもたちの孤独感や支援の必要性は、
さまざまな調査結果からも浮かぶ。
NPO法人ふたばふらっとホーム(東京都調布市)が
11年、養護施設や里親家庭などで暮らした
10〜30代の949人に「社会に出て困ったこと」
(複数回答)を聞いたところ、
「いきなり1人になりさびしかった」(34%)、
「アパートなどの保証人(がいない)」(33%)などの
回答が多かった。

 埼玉県は12年、過去10年に児童養護施設などを退所した
2359人のうち、連絡先を把握している
612人に調査を実施した。
「退所前後に望ましい支援」(回答148人、複数回答)は、
「相談窓口」47.3%
▽「精神的な支援」45.9%−−などだった。
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