社説:学校内虐待 障害児の悲鳴を聞け


毎日jp
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 頭をこづく、襟首を持って引きずり回す、
床にたたき付ける、罵声を浴びせる。
障害のある児童・生徒に対する先生の虐待を最近よく耳にする。
まさか、と思われるかもしれないが、
どこでも虐待は起こり得る。学校だけが例外であるわけがない。

 障害者虐待防止法が昨年施行され、
連日のように各地の市町村に相談や通報が寄せられている。
ところが、同法で定められた調査対象は
「家庭」「福祉現場」「雇用現場」だけで、
「学校」「病院」は直接調査に入ることができない。
文部科学省や医療関係者が反対したからだ。

 しかし、障害者の親の会を対象にした調査では、
家庭や福祉現場よりも学校での虐待件数の方が多かった。
人手不足もたしかだが、福祉現場も人手は足りない。む
しろ、密室化した教室で力ずくの指導、
感情に任せた叱責がまかり通っているとの声を
現場の先生たち自身から聞く。
教員資格は持っていても障害特有の
心理や行動特性は意外に知らない先生が多いというのだ。
障害者の人権に関する法整備が進み、
行動障害に関する認識や対処方法も開発されてきた。
そうしたことに関心を持たない無知や
独善も虐待を生む一因となっているのかもしれない。

 虐待防止法が施行されてから、
福祉現場の管理者や職員に対する研修は
盛んに行われるようになった。
地域によって温度差はあるが、
大阪府では専門のスーパーバイザーを60人養成し
福祉現場に派遣して支援技術を向上させ
虐待リスクを低減させる職場の構築に努めている。
そうした改善に向けた取り組みの流れから
外れているのが学校だ。

 同法では学校と病院の管理者に
虐待の予防改善義務が課せられた。
心を痛めて孤軍奮闘している先生もいる。
心理や福祉の専門職の協力も得て
学校現場を改善すべきだ。

 一方、国連障害者権利条約を批准するために
国内法の見直しが現在行われている。
中央教育審議会は昨年、「インクルーシブ(包摂的)教育」の
推進や障害特性に合った合理的配慮を
学校現場に導入する報告書をまとめた。
障害のある子もない子も同じ場所で
学ぶことを原則とするのだが、
現在そうした統合教育に積極的な学校も
発達障害などの特性に配慮が足りず、
専門職を含めた人員不足もあって、
子どもがストレスで2次障害を起こし
福祉現場に救いを求めてくるケースが後を絶たない。

 インクルーシブ教育が大事なのは当然である。
しかし、学校が今のままではつぶれる子が
続出するのではないか。
悲鳴すら上げられず自らを傷つけている
障害児を見てほしい。
子どもが言わないため、先生たちは原因を知らないだけだ。
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