幼児教育の無償化より保育所整備を急げ


日本経済新聞
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 幼児教育の無償化について検討する
政府・与党の連絡協議会が近く設置されることになった。
自民、公明両党が衆院選で政権公約した
3~5歳児の幼稚園や保育所などを無償にするというものだ。

 少子化相、文部科学相、厚生労働相の3閣僚のほか、
自公両党の内閣、文科、厚労の各部会長らが
実施時期や対象施設、財源などを議論し、
6月をめどに制度の概要を示す
幼児教育大綱(仮称)をまとめるという。

 無償化には政府試算で年8200億円の財源が必要だ。
安倍晋三首相は選挙戦で「財源はある」と訴えたが、
詳細は明らかにしていない。
これでは財源不足で事実上破綻し、
バラマキと批判された民主党政権時代の
子ども手当の二の舞いを演じかねない。

 対象を3~5歳とする点もふに落ちない。
国の基準を満たす認可保育所に入れない
待機児童は全国で約2万5千人に上り、
その8割超は0~2歳児という現実にもっと目を向けるべきだ。

 子育て支援策で急がなければならないのは、
子供が安全に過ごせる施設を整備し、
子供を預けられずに働けない親、
特に母親の就労を促すことだ。
女性の社会進出が進んだことに加え、
家計を支えるためにパートで働く女性が増え、
都市部の保育所不足は深刻だ。

 保育所の担い手として期待される
企業の保育市場への参入を促す施策は不十分だ。
規制緩和から10年余りたったが、
全認可保育所のうち企業運営の施設は約1%だ。

 待機児童が全国で最も多かった横浜市は
企業の参入を促すことで保育所の整備を進め、
周辺地域から子育て世代が移り住む例も出ている。
手厚い保育サービスを提供できる企業なら、
自治体は参入を認めるべきだ。

 施設を設ける際に国や自治体から
事業主に支給される補助金のあり方も見直すべきだ。
現行制度で企業がもらえる金額は、
社会福祉法人に比べて大幅に少ない。
この偏りを緩和すれば、
財源を増やさなくても保育所の整備が進む。

 日本では働く女性の6割が
出産を機に退職する状況がこの20年、
ほとんど変わっていない。
保育所が十分に整備されれば、
出産後も働き続ける女性は確実に増える。

 人口が減るなかで、労働力の減少を抑え、
経済の活力を損なわないようにするためにも、
女性の就労促進につながる子育て支援策が求められる。
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