多発する保育所死亡事故 第三者委設置に厚い壁


中日新聞
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 昨年報告された全国の保育所での死亡事故が、
過去最多となる十八件に上ったことが
厚生労働省のまとめで分かった。
だが、第三者による事故調査委員会の設置はまれ。
遺族からは詳しい調査や再発防止、
事故情報の開示を義務付けるよう求める声が上がっている。
 (稲熊美樹)

 昨年報告された死亡事故は前年より四件増。
認可保育所で六件、認可外で十二件。
昼寝中が十四件(うち五件はうつぶせ寝)で、
団子が詰まった(二件)、プールで溺れた、
マンションの足場が倒壊し、下敷きになった事故が各一件。
骨折、やけどなど三十日以上の
治療が必要な重傷事故は百二十七件だった。

 国は保育所などに事故の報告を求めているが、
法での義務付けはない。
死亡十八件のうち一件と、重傷事故のうち
五十件は二〇一一年の発生だった。

     ◇

 川崎市の飯山拓斗ちゃん=当時十一カ月=は
一〇年四月、登園六日目の認可外保育所で亡くなった。
昼寝していた拓斗ちゃんを起こしにいった職員が、
青白くなっているのを見つけた。
事故後、保育所から詳しい説明はない。

 両親は事故後、市へ情報開示請求などをして、
保育所の苦情が市に多く寄せられ、
過去にも同じ死亡事故があったことを知った。
「過去の事故を知っていたら、
拓斗を預けることはなかった」と母の宏美さん(34)。
父の智(さとし)さん(42)も
「市は死亡事故があったら、
きちんと調べて知らせるべきだ」と話す。

 「元気な子だったから、突然の死が信じられない」。
さいたま市の阿部一美さん(34)は、
市が認定する家庭保育室に通っていた
長女の美月ちゃん=当時一歳=を一一年二月に亡くした。
保育士は美月ちゃんをうつぶせにし、
布団をかぶせて寝かせた。
市に第三者による事故調査を要望したが、実現していない。
警察の捜査も結論は出ておらず、
一美さんは「これまできちんと調べてこなかったから、
事故がなくならない」と訴える。

 真相究明を求め、司法の場に望みをつなぐ遺族もいる。
大阪府高槻市の須川香織さん(40)と邦洋さん(39)は、
長男の駿一郎ちゃん=当時一歳=を
一一年四月、認可外保育所で亡くした。
給食の豚汁を三杯食べ、
うつぶせで頭まで布団をかぶせられて
昼寝していたという。
解剖の結果、嘔吐(おうと)物を
吸い込んでいたことが分かった。

 市は事故後、「調査したが、
原因は特定できなかった」と書類で通知。
しかし「市がどんな調査をしたか分からない。
なぜ亡くなったのかを知りたい」と、
両親は市と保育所代表者を提訴した。
「憎いだけで提訴したのではない。
原因を明らかにしない限り、
事故は繰り返される」と、香織さんは話す。

     ◇

 愛知県碧南市の認可保育所で一〇年十月、
おやつをのどに詰まらせて亡くなった
栗並寛也(くりなみひろや)ちゃん=当時一歳=の事故では、
遺族の粘り強い要望で、
市が専門家ら第三者による検証委員会を設けた。
ただ、委員会の設置までに事故から一年半もかかり、
七日にようやく市長へ最終報告書が手渡される予定だ。

 母のえみさん(33)は、「時間がたったことで、
解明できないこともあった。
速やかに専門家が事故を調べる制度をつくってほしい」と訴える。
今後は報告書を持って国の担当者と面会し、
制度化の必要性を訴えるつもりだ。

 えみさんら、保育所などで
子どもを亡くした親たちでつくる
「赤ちゃんの急死を考える会」には、
遺族からの相談が絶えない。
副会長の小山義夫さんは
「(保育所や市町村による)報告書には
信ぴょう性が低い記載も多く含まれている」と指摘し、
第三者による調査が必要と主張している。
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