【福島県】児童虐待認知109件、最多


朝日新聞
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 ●県警調べ、避難生活影響か/「実の両親」が8割

 虐待被害に遭う子どもの数が増えている。
県警が昨年1年間に取り扱った児童虐待は109件で、
統計を取り始めた1999年以降、最も多かった。
世間の関心が高まったことに加えて、
震災や原発事故による避難生活が
影響しているとの見方も出ている。

 昨年5月、福島市内の児童養護施設に
3歳の女の子が入所してきた。
東京電力福島第一原発の事故で、
両親とともに双葉郡から県内の仮設住宅に避難してきた。

 だが、避難生活で両親のけんかが絶えず、離婚協議に。
女の子は母親と2人で暮らすことになった。
周囲の環境になじめず、県内4カ所の仮設住宅を転々とした。
母親は次第に育児を放棄し、
女の子を抱くこともしなくなったという。
周囲の人が見かねて児童相談所に通報し、
女児は児童養護施設へ入った。

 施設職員の女性(69)は
「施設にきたころはほとんど表情がなかった」と振り返る。
3カ月が過ぎたころから、親しい職員に
甘えたがることが多くなった。
女性は「十分に受けられなかった愛情を
取り戻そうとしているのかも」という。

 女の子が入所した施設では、
子どもたちの半数が過去に虐待を受けていて、
ほとんどは親の育児放棄だった。
虐待を経験した子どもは、感情表現がうまくできずに
暴力を振るってしまうケースも少なくない。
職員の女性は「虐待は子どもの心に
一生消えない傷を残してしまう」と話した。

 県警少年課によると、昨年1年間に
虐待を受けたとされる109人の子どものうち、
78人が小学生以下で、虐待を加えた人の
約8割が実の父母だった。
同課の幹部は「実の両親からの虐待が
子どもに与える影響の大きさは、計り知れない」と話す。

 同居する親からの虐待を防ぐため、
国は08年に児童虐待防止法を改正。
虐待の疑いがあれば、児童相談所(児相)は
裁判所の許可を得て強制的に
家庭内へ立ち入ることが認められた。
改正法に基づいて、県警は先月22日に
県や児相と訓練に臨み、強制立ち入りの方法などを
児相の職員に伝えた。

 県内に6カ所ある児相では、06年度以降、
毎年200件以上の児童虐待に対応している。
県児童家庭課の遠藤泰弘副課長は
「巡回や市町村との連携を強め、
虐待の早期発見と未然防止に努める」と話した。

 県や県警は児童虐待の件数が増えた原因について
「社会の関心が高まったため」と分析。
一方で、実際に子どもを受け入れている施設は、
震災があった11年から急増していることをふまえ、
震災や原発事故の影響を心配する。

 福島市の児童養護施設「青葉学園」は、
56人の入所児童のうち、約7割が
親などからの虐待を経験している。
神戸信行園長は「原発事故は家族をバラバラにし、
長期化する避難生活は大人の心を追い詰めている」と話した。

 実際に青葉学園でも、原発事故の避難後に虐待を受け、
入所してきた子どもがいるという。
神戸園長は「虐待は社会の縮図。
社会が不安定になると、しわ寄せは
一番弱い子どもに向かってしまう。
社会全体で子どもを見守り、育てる仕組みづくりに
一刻も早く取り組むべきだ」と指摘した。(藤原慎一)
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