明治の幼稚園 お宝守れ…大阪市立「愛珠」


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 大阪市の市立幼稚園民営化方針で、
国内最古の園舎(重文)で知られる
市立愛珠あいしゅ幼稚園(中央区)の
教具類の扱いが注目されている。
明治初期に地元・船場の有力商人たちが
私財を投じて創設した園には、歴史価値の高い玩具や教材など
1000点以上があるが、所有権の所在はあいまいで、
民営化後に散逸の恐れがあるからだ。
市側は目録を整備し、売却を認めない覚書を
運営法人と交わすなどの対策に乗り出す。

 市立幼稚園の民営化は、
橋下徹市長が経費削減などのため市長選で公約した。
市は全59園について4月までに民営化か廃園を決める。

 愛珠幼稚園は1880年(明治13年)に開園し、
後に市に移管された。
市によると、入園希望者は多いうえ、
地元の意向や歴史的経緯も重視し、民営化を検討しているが、
問題となるのが、同園が所蔵する膨大な〈お宝教具〉の扱いだ。

 園では、明治時代にドイツから輸入された
グランドピアノが今も使われている。
蔵には、四角形の珍しい「角太鼓」や、
平安時代から伝わる玩具「貝合わせ」、
写真や絵を映した箱をのぞいて楽しむ「幻燈」など、
明治から昭和初期にかけて寄贈されるなどした
教具類が1000点以上も残されている。

 これら貴重な所蔵品については、
全国から研究者が見学などに訪れ、
年2回は一般公開も実施。
補修費用は卒園者らで作る同窓会
「愛珠会」(約500人)が毎年、支援している。

 ところが、所蔵品の大半は園の備品台帳に記録されておらず、
所有権が誰にあるかは不明。
ただ、園に付属する品々のため、
民営化後は移管先法人に管理を委ねることになるという。

 市は今後、園にあるすべての教具類の目録を整備し、
移管契約を結ぶ際、所蔵品の保管を約束させた上で、
保育での使用や一般公開への協力についても
覚書を交わす考えだ。愛珠会にも引き続き協力要請する。

 愛珠会役員の丸山悦治さん(65)は
「船場の名士たちが贈り、地域で守ってきた経緯を踏まえ、
子どもたちのために大切に使い続けてほしい」と訴えており、
笠井康孝・市幼稚園運営企画担当課長は
「園の歴史や所蔵品の価値を考えれば、特別な配慮が必要。
散逸しないよう、万全の手を打ちたい」と話す。

 上方文化評論家の福井栄一さんは
「愛珠幼稚園の教具類は、船場商人たちが
子女の教育への熱意と財力をかけて残してくれた地域の誇り。
経済効率のために民営化するのではなく、
民に託すならばこうした地域の歴史も含めて
引き受けてもらうことが必要だ。
これを機に専門家も交えて
適切な保管のあり方を検討した方がいい」と指摘している。
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