性的マイノリティーの子 理解を 教育関係者が取り組み 当事者交え議論 研究大会


西日本新聞
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 心と体の性が一致しないトランスジェンダーや
同性愛などのセクシュアルマイノリティー(性的少数者)
である子どもの場合、学校生活は心身への負担が大きい。
悩みを抱えて孤立し、いじめや不登校につながるケースもある。
そんな現状を理解し、支援しようという動きが
教育関係者の間で活発になってきた。

 「気付かないだけで、実際は学級に1人か2人は
LGBTの子がいると考えてください」。
2月に熊本市で開かれた九州地区の性教育研究大会。
「多様なセクシュアリティーを持つ
子どもへの支援を考える」を主題に、
当事者を交えてのパネルディスカッションがあった。

 LGBTは、同性愛のレズビアンやゲイ、
両性愛のバイセクシュアル、トランスジェンダーの英語の頭文字。
こうした性的少数者の人口比は3~5%程度とされる。
思春期には、二次性徴による体の変化、
男女別の制服やトイレ、恋愛感情の芽生えなどで
性別への違和感が強くなったり、
自己否定感に陥ったりしがちだという。

 性同一性障害(GID)学会理事長で
岡山大学病院・ジェンダークリニックの
医師、中塚幹也さん(51)によると、
GIDと診断された人の約9割が
中学生までに性別違和を感じていたという。
また、患者1452人の分析では、
自殺しようと考えた人が58%、
不登校経験者は30%に上った。
中塚さんは「治療でひげや声変わりを抑えることもできる。
医療機関につなぐ意味でも学校の役割は重要」と強調した。

 パネリストとして参加した福岡県の大学に通う真さん(24)は、
戸籍上は女性で心は男性。
中学時代は制服のスカートが苦痛で、担任に申し出た。
返ってきたのは「そんなわがままを言うと
社会でやっていけないぞ」。
以降、必死で気持ちを押し隠した。
「誰にも言えず、死にたいと思う時期もあった」と振り返った。

 真さんがLGBTについて知ったのは19歳の時。
友人に打ち明け、受け入れられたことで生きやすくなった。
「もし、LGBTについて学校で学ぶ機会があれば、
もっと早く人生が動き始めたと思う」と話した。

 ゲイと公表している福岡県の教員、
豊さん(31)は自身の体験を交え、
異性愛中心の社会で同性愛の子はいじめに遭ったり、
将来像が描けずに悩んだりしていることなどを紹介。
「教師は生徒の前でセクシュアルマイノリティーを
否定する言動をせず、正しい知識を教えてほしい」
と呼び掛けた。

 福岡市人権教育研究会も取り組みを進めている。
2011年度から機関誌「Access」で、
3回にわたって特集「多様な性について」を組んだ。
基本的な知識、当事者や親の体験、
学校現場で望まれる対応などについて詳しく紹介。
昨年の夏期研究集会でも分科会を設けて議論した。
事務局長で小学校教諭の大谷和弘さん(48)は
「今まで声を上げられない人が多くて
見過ごされてきた問題。
まずは知ること、学ぶことから始めたい」と話している。

 ●多様な生き方教えて 差別的発言はやめて

 性教育研究大会で話し合われた
学校生活での対応をQ&Aでまとめてみた。

   ×    ×

 Q どうやって情報を伝えればいいのですか。

 A 学級文庫にLGBTに関する本を置く
▽新聞を使った学習の時間に他の記事と一緒に
LGBT関連のものを紹介する
▽象徴であるレインボーグッズを教室に置く-など、
一緒に知ろうとする姿勢を見せて。

 Q 悩んでいるのに言い出せない子への対応は?

 A 知識がなければ自分が「そうかもしれない」
とは認識できない。
同性愛、異性愛、無性愛…。
いろんな性のあり方があって、
多様な生き方ができることを教えましょう。
カミングアウト(公言)してもいじめの対象に
ならないような差別のない環境づくりも大切です。
笑いのネタで「ホモ」「オカマ」などの
言葉を使って傷つく子がいる。
教諭自身はもちろん、
子どもたちの差別的な発言も注意してやめさせること。

 Q 健康診断や修学旅行での入浴などでの対応は?

 A LGBTでなくても、やけどがあるなど
体を見せたくない子もいます。
健康診断の時間や場所をずらしたり、
個室のシャワーを使えるようにしたりするなどの対応を。
特別扱いされたくない子もいるので、
みんなに「個別の対応もできるよ」と提案してほしい。
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