いろはのい:増える待機児童 保育士不足がネックに


毎日jp
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 子どもの保育所への4月入所がかなわなかった
首都圏の母親たちが、各地で異議申し立てを起こすなど
保育所待機児童の問題は深刻さを増しています。
ただ、その一方で、保育所を増やそうにも
保育士が集まらないという事態も起きています。
【山崎友記子】

 ◇処遇改善に着手

 出産後も働き続ける女性や共働きする夫婦が増え、
保育所に入る子どもは増えるばかり。
だからといって、保育所の定員を増やしたくとも
保育士を確保できないという悲鳴が各地で上がっています。

 厚生労働省が11年に都市部や
待機児童の多い自治体を対象に実施した調査では、
回答した130自治体の約8割が「保育士不足」と答え、
その約8割は「長期的な課題」と回答しました。

 こうした状況を改善しようと、厚労省は
新たな保育士確保策をスタートさせます。
12年度の補正予算には438億円を盛り込みました。
目玉は保育士の処遇改善です。
12年の賃金構造基本統計調査によると、
私立施設の保育士の平均給与は月額約21万円。
全職種平均の約29万8000円より約9万円低く、
幼稚園教諭などより低額です。
同省の保育士を対象とした調査(11年)でも、
「勤務内容に比べ給与が安い」と答えた人が
半数を上回りました。09年の離職率は10%。
平均勤続年数は8・4年で全産業平均の11・9年より
2年以上短くなっています。

 厚労省は低待遇が離職につながっているとみて、
補正予算のうち340億円を
保育士の賃金アップに充てる意向です。
対象は相対的に公立保育所より
給与の低い私立保育所で、保育士の処遇改善に
取り組む施設には保育士の平均勤続年数に応じて
費用を補助します。
同省は過去の介護職員の処遇改善策で
平均月額賃金を1万5000円引き上げるなどの
目標を掲げていました。
今回は目標額こそ示していませんが、
月収約30万円の保育士なら標準的なケースで
約8000円増になるとみています。

 ◇資格取得を促進

 また保育士の資格取得者を増やす取り組みも進めます。
保育士養成校の入学定員は長らく、
増加傾向にあったのですが、
資格を取得して卒業する人は減ってきていました。
このため認可外保育施設で働く保育士資格のない人を
支援し、資格取得を促します。
受講費用の半分と、受講のために職員が
仕事を休む際、その代替要員にかかる費用を補助します。
認可保育所の保育者は全員有資格者なのに対し、
認可外では有資格者が6〜7割という施設もあります。
資格取得者を増やすことで、
将来認可外から認可保育所へ
移行しやすくする効果も狙っています。

 このほか、保育士養成校の入学者で
経済的に苦しい人などを対象に、
修学資金を貸し付ける制度を設けます。
毎月の資金(上限5万円、最高で24カ月分120万円)と、
入学時と卒業時の一時金(最高各20万円)で、
計160万円まで借りることができます。
しかも、卒業後5年間保育所で勤務すれば、
返済は免除されます。

 一方、資格を持ちながら保育現場で働いていない
「潜在保育士」は60万〜70万人いるとみられています。
人材確保に向けて潜在保育士の就職を後押しするため、
「保育士・保育所支援センター」を各都道府県に設置し、
求職者の相談を受けるほか、
就職先の紹介、保育所側への助言もします。

 保育士の処遇改善は、保育の質向上にもつながります。
ただ、約2万5000人に達する
保育所待機児童を即座に解消する即効性は期待できません。
政府の規制改革会議は保育者が全員、
有資格者でなくともよいとする規制緩和を検討していますが、
安全の確保策など検討すべき課題も少なくありません。
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