保育事故 徹底検証を、教訓生かせ


東京新聞
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 保育施設で事故の犠牲になる幼い命が少なくない。
保育の環境や内容に問題はなかったのか、
第三者を交えて徹底検証が必要だ。
それぞれの現場が事故を防ぎ、
教訓を生かせる仕組みを強めるべきだ。

 厚生労働省が公表した昨年の事故報告をみると、
死亡事故は前年の十四件から十八件に増加。
認可保育所で六件、無認可施設が十二件。
無認可は前年と同数で、一時預かりで
初めて預けた日の事故が三件、夜間保育中が三件など。
認可は無認可より少ないが、法の基準に従い、
安全と思われていた施設でも、前年に比べて
一気に四件も増えている。

 そのうち二件は、おやつの白玉団子を
保育士が目を離したすきに丸ごと飲み込んで窒息した、
一、二歳児のケース。
三年前に愛知県碧南市の保育所で起きた、
カステラなどをのどに詰まらせた事故と似ている。
碧南市は詳細な報告書を公表しているのに、
教訓として生かされていないのは残念だ。

 そもそも厚労省の保育事故への対応は甘すぎる。
保育施設で事故が起きても報告を義務づけてこなかった。
三月にやっと、死亡など重大事故が起きた場合に、
再発防止の検証を市区町村に求める通知を出したが、
それも対象は認可のみ。
事故の発生率が高い無認可が対象でないのは不十分だ。

 「制度外」の無認可施設は行政の監督の目も届きにくい。
立ち入り検査は事前通告で行われ、改善指導も放置し、
重大事故になった例もある。
死亡事故の大半は待機児童の多いゼロ~一歳児だ。
うつぶせ寝による窒息が疑われる場合が多いが、
密室で起きた事故は真相の究明が難しい。
司法解剖しても「死因不明」。
警察が「事件性なし」と判断すれば親は泣き寝入りで、
原因の追及は終わってしまう。
よく分からない事故こそ、遺族らの意向も取り入れた
第三者委員会による解明が必要だ。

 政府の規制改革会議は、待機児童の多い自治体に対し、
認可保育所の施設や保育士の基準緩和を検討中だ。
だが、二〇〇〇年代からすでに、
保育施設の面積基準いっぱいに乳幼児が詰め込まれ、
保育士の非正規化が進む。
子どもの小さな変化を見逃さないよう努めても、
職場に余裕が失われているとの声も出ている。

 骨折や指切断などの負傷事故も活発に動く
四、五歳児で増えている。
規制緩和を進めるより前に、
保育環境と事故との因果関係を調べるのが先だ。
親たちが望むのは安心と安全が守られた保育だ。
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