ぜんそく持ちの子どももよく遊べ―呼吸器専門家の見解に変化


THE WALL STREET JOURNAL
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 ぜんそく持ちの子どもも、
学校の体育の時間に体をよく動かすべきで、
呼吸困難に陥るかもしれない発作の発生を
心配しないようにすべきだ―。
呼吸器の専門家の見解は、こんな方向にシフトしつつある。

 呼吸器専門の医師らは、
ぜんそく持ちの人々が体を動かすのは有害でなく、
治療に効果的である可能性さえあると考えている。
医療分野の治療や意思決定について
評価する医学誌「コクラン・データベース・システムズ・レビュー」に
昨年掲載されたある報告は、
運動とぜんそくに関する19件の研究に着目し、
ぜんそく持ちの人々が運動することで
元気にやっていけると結論付けた。
研究の結果は、運動は患者によるぜんそくのコントロールに
差をもたらさないというものから、
運動によって症状の出ない日が増えたり、
ぜんそくの重症度が下がったりしたというものまで、
さまざまだった。

 ペンジルベニア州立大学医学部の
免疫学者でアレルギー専門医のティモシー・クレイグ博士によると、
ぜんそく持ちの動物を対象にした実験でも、
運動がぜんそくの重症度を下げたり、
発作の頻度を減らしたりしたように見えるという。
このマウスを対象にした実験では、
運動が気道の炎症性タンパク質や
ペプチドの活動を抑えたことが分かった。
気道は刺激を受けると発作を引き起こす。

 同博士は「もしぜんそくがうまくコントロールできているのなら、
運動が可能なはずだ」と述べた。

 運動への恐怖は、多くのぜんそく患者にとって現実のものだ。
運動は発作を促す可能性があるが、
発作が起こると、気道が炎症を起こし、
肺の筋肉が収縮して、呼吸が困難になる。
処置が行われなければ、
重篤な場合は死に至ることもある。

 米国の17歳未満の子どもの約9%がぜんそく持ちであり、
うち多くはこの状況が生涯続く。
疾病管理予防センター(CDC)のデータによると、
2010年の時点で米国の全年齢の2500万人以上がぜんそく持ちで、
全人口に対する比率は8.4%と、
01年の7.3%から上昇している。

 10人にほぼ1人の割合で子どもがぜんそく持ちであることから、
彼らが運動できる方法を見つけることが重要だ、
と保健当局者は指摘する。
体を動かさないと肥満のリスクが高まる。
ぜんそく持ちの子どもが社会的に困難に直面する恐れもある。
体育の授業やその他のグループ活動に
参加できないことでぜんそく持ちの子どもが
孤立感を抱く恐れがあるほか、
他の子どもたちが彼らを弱い者とみなして、
からかいの対象にする可能性もある。

 前出のクレイグ博士は、運動が頻繁な
ぜんそくの発作につながるのであれば、
それはぜんそくがうまくコントロールできておらず、
別の治療プランが必要であることを示す兆候だと指摘する。
同博士によれば、こういったケースの大半において、
医師と患者の両方がぜんそくを過小評価している。
こういった場合、患者は不満を抱き、
心配になって運動する努力をやめてしまうという。

 ワシントン州スポケーン在住の
セリア・ビジルさん(12)はぜんそくの発作を恐れ、
何年も激しい運動を避けていた。
彼女によれば、学校でスポーツに参加しても、
それほど長く続けられず、
試合からすぐに外れなければならないことが多かったという。
彼女はぜんそくの発作が起こると、
息が十分に吸い込めないように感じると言い、
「恐怖に感じる。発作が収まらなかったら
どうしようと思ってしまう」と話した。

 セリアさんは2年前、新しい医者に診てもらうようになった。
この医者は診察時に毎回、運動の大切さを説明した。
セリアさんは持続性の医薬品「Advair」に替えた。
症状をよりうまくコントロールできるからだ。
また、運動前にはときどき吸入具で2回吸入をするようになった。
以前はこういったことはしていなかった。
セリアさんによると、今は体育の授業の大半で
他の子どもたちについて行けるようになった。
「参加した方が楽しい。ここまでできるようになった」
と彼女は話した。

 クレイグ博士は、ぜんそく持ちの人が
良い治療プランを備えていたとしても、
運動中は特別の注意を払う必要があると指摘する。
例えば、ウォーキングやジョギングの前には、
遅いペースから始めるなど、ウォームアップをすべきだという。
また、運動後には体を完全に止める前にスピードを落としたり、
体を落ち着かせたりして、「ウォームダウン」すべきだ。
同博士によれば、心拍数を徐々に変化させることは、
発作のリスクを小さくするようだ。

 同博士は、ぜんそくがうまくコントロールできている子どもや若者は、
ぜんそく持ちでない若者向けにCDCが奨励しているのと
同レベルの運動をすることを目標にすべきだと指摘する。
CDCは強度が中程度の有酸素運動(早歩きなど)を
1日に少なくとも60分間行い、それに加え、
強い強度の運動を1週間に3回するなどを推奨している。

 国立心臓・肺・血液研究所が発行した
ぜんそく教育・予防プログラムのガイドラインは、
医師に対し、ぜんそく患者に積極的にスポーツや
その他の運動への参加を促すよう求めている。
 しかし患者、スポーツのコーチ、
それに呼吸器を専門としない医師の多くは、
運動がぜんそく持ちの子どもに
有益な可能性があることを依然として知らない。
また運動について患者と定期的に話さない場合が多い。
ぜんそく持ちの子どもの運動について研究している
ワシントン州立大学看護学部のミシェル・ショー教授は、
「多くの教育が必要だと感じている」と話す。

 呼吸療法士で全米呼吸器治療協会(AARC)の
副代表を務めるショーナ・ストリックランド氏によると、
ぜんそくの発作は運動、寒さ、その他の誘因によって起こり得る。
治療には通常、炎症を抑える吸入式の副腎皮質ホルモンと、
気管の筋肉を緩める長時間・短時間作用型ベータアゴニスト、
例えばアルブテロールが使われる。
一部の患者では、運動前に吸入器で1回ないし2回吸入すれば、
発作を抑えられる可能性がある。

 前出のセリアさんの母親のシンシア・ビジルさんによると、
セリアさんが小さいときにぜんそくの激しい発作を繰り返していたため、
家族はセリアさんの運動を徐々に制限するようになっていた。
セリアさんはそり遊びを許されなかった。
冷たい空気がぜんそくを悪化させたからだ。
また、外で他の子どもたちやぜんそく持ちでない
2人の妹と遊ぶこともできなかった。
コミュニティーカレッジでカウンセラーとして働く
シンシアさんは、「全てわたしたちの
抱く恐怖から出た指示だった」と話した。

 2年前に激しい発作を起こして収容された病院で、
セリアさんのぜんそくをよりうまくコントロールする必要があるとの説明を
救急担当の医師から受けた。
一家はその医師の投薬に関する助言に従い、
小児科医も替えた。

 シンシアさんによれば、セリアさんは
運動をするようになってからぜんそくの発作を
起こしていないという。
昨冬には初めてクラスメートとの雪歩きに参加し、
昨年5月には家族と11.2キロメートルを完走(完歩)した。
体重も減ったという。

 シンシアさんによれば、学校の教師らは
今も一家に電話し、セリアさんを
特定の活動に参加させても良いかどうか聞いてくる。
シンシアさんはセリアさんが運動することへの
懸念を依然持ち続けているものの、
中学校でスポーツチームに参加したいという
彼女の気持ちを後押ししようと努力している。
セリアさんは、学校で以前よりも
自分が仲間の一員であると感じているそうで、
今夏、バレーボールを得意競技にできるか
試せるのを楽しみにしているという。
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