働く女性に手厚い支援 首相「育児休業3年」表明


日本経済新聞
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 安倍晋三首相は子供が1歳半になるまで
認められている育児休業を3歳まで延ばし、
5年間で待機児童ゼロをめざす方針を決めた。
19日の経済3団体トップとの会談で協力を要請する。
少子高齢化に伴う労働力人口の減少に歯止めをかけるのが狙いだ。
仕事と子育ての両立に悩む家庭には朗報と言えるが、
実現に向けて給付負担や企業のコスト増大などの
課題を克服する具体策が問われる。

 政府は今後、産業競争力会議(議長・安倍首相)で議論し、
成長戦略に織り込む。2014年度の導入をめざす。

 現在の育児休業制度では最長で子供が
1歳半になるまで休業前賃金の50%がもらえる。
育児休業給付の初回受給者は11年度で
07年度比約51%増の22万4800人と、利用が進んできた。

 給付は労使が折半する保険料のほか、国庫負担で賄っている。
本来は給付の12.5%を国が負担するはずだが、
社会保障費を抑制するため、
半分強の7%弱に抑えているのが実情だ。

■企業は負担増

 育児休業期間が延び、給付も広がれば、
育児のゆとりは増える。
待機児童問題で子どもを保育所に預けるタイミングを
待つ家庭にとっては選択肢が増えるという利点もある。

 一方、国と労使の負担は増す。
年間支給額が今の約2600億円(11年度)から
3000億円を超えて膨らむのは確実だ。
給付をどう賄い、国と企業と従業員が
どうバランスをとるかが大きな課題となりそうだ。

 先んじて社内制度として休業延長を
認めている大企業は少なくない。
資生堂は1990年から子供が満3歳になるまで
最長3年間まで休業の延長を認めている。
子供2人目からも通算5年以内であれば休暇を取得できる。
日立製作所は08年、休暇の取得期間の限度を
「小学校1年生が終わるまでの間の通算3年間」に延長した。

 日産自動車では育児休業に加え、
子供が2歳になった後の4月末まで
育児休暇を取得できる。
5月生まれだと2年11カ月まで延長できるが、
延長した分は無給だ。
企業にとっては国の支援が広がれば
休業期間を延ばしやすくなるが、
育児休業中に代わりの人材を確保するなど、
追加的なコストも無視できない。

 3年後に職場復帰することの難しさもある。
ある大手小売りでは実際に3年取得する例は
「全体の数%だけ。復職してからどう働くかに悩み、
勤労意欲が高まらないなどの課題もある」。
キリンビールは3年まで休業延長を認めていたが、
利用者が少ないため、06年に2年に短縮した。
同社は「育児休業だけでなく短時間勤務と併せて
制度を運用」する方が実態に合っているという。

 むしろ、もう一つの柱である、
待機児童ゼロに向けた保育の受け皿拡充の方が
重要だとの指摘もある。

■保育所なお不足

 両親が働くなど要件を備えているのに
認可保育所に入れなかった待機児童の数は、
厚生労働省によると昨年10月時点で約4万6千人。
前年より500人弱減ったが依然多い。
対策は追いついていないが、
横浜市のように工夫を凝らして
「待機児童ゼロ」を実現した例もある。

 都市部では保育所の用地不足が一番の難題だ。
横浜市は未利用の公有地や鉄道や
道路の高架下を使って、10~12年度に
140超の認可保育所を新設した。
それでも認可保育所に入れない子どもには、
安心できる認可外の保育施設や
サービスを紹介する仕組みを整えた。

 10年4月時点で全国の市町村別で
最多の1552人だった待機児童の数は
12年4月は179人に減り、
今年4月にはほぼゼロを達成したもようだ。
こうした取り組みを全国に広げる必要がある。

 家庭と仕事の両立支援策に詳しい
第一生命経済研究所の的場康子上席主任研究員は
「待機児童を解消するには、
保育所整備と職場での働き方を
両輪で考えなければならない。
そういう意味でも育児休業延長が選択肢として
用意されるのは望ましい」と評価する。
女性のキャリア形成や職場の負担増といった課題にも触れ、
「あとは制度をどう運用するかが問われる」と指摘した。
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