小1プロブレム解決を阻む《公私》の壁 進まぬ私立幼稚園との連携‐斎藤剛史‐


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新学期も約2か月がすぎ、子どもたちも新しい環境に慣れてくる時期となりました。
しかし、実際の学校現場では緊張感が薄れた時期から、
さまざまな問題が表面化することが少なくありません。
小学校入学後にいつまでも授業中の立ち歩きが止まらない、
教員の指示に従わないといった「小1プロブレム」と言われる問題もそうです。
各小学校では文部科学省の主導により「幼小連携」を進めて
幼稚園・保育所から小学校へのスムーズな移行を目指していますが、
ここに大きな「落とし穴」が一つあることがわかりました。

東京都の調査によると、2012(平成24)年度に
「第1学年児童の不適応状況」(小1プロブレム)が発生したのは
公立小学校全体の21.1%で、約5校に1校となっています。
これに対して、文科省が対策として重視しているのが、
幼児教育と小学校の関係者が協力し合って
幼稚園・保育所から小学校への移行をスムーズに行えるような体制や
カリキュラムをつくる「幼小連携」の推進です。
実際、幼小連携の取り組みをする小学校は全国的に増加しており、
たとえば東京都では2012(平成24)年度に
公立小学校の58. 5%が幼稚園、77.4%が保育所と連携しています。

ところが、大きな問題点があることが、
文科省の実態調査で判明しました。
全国の幼稚園のうち2012(平成24)年度に
園児が小学校と交流活動をしたのは、
公立幼稚園が95.7%なのに対して私立幼稚園は64.2%、
幼稚園教員と小学校教員が交流したのは
公立幼稚園が90.3%に対して私立幼稚園は61.5%、
さらにカリキュラム編成などのため子どもに関する情報交換を
小学校としたのは公立幼稚園が63.8%、私立幼稚園は40.8%でした。
つまり、多くの公立学校が取り組んでいる幼小連携のほとんどが、
実質的には「公立小学校と公立幼稚園の連携」であるということです。
保育所との連携でも事情は同じだと推察されます。
「小1プロブレム」対策のため幼小連携の推進が強く求められており、
各種調査でも表面的には幼小連携の取り組みが
年々増えているように見えますが、
実際は公立同士の連携が中心で、
全国の幼稚園児全体の8割以上を抱えている
私立幼稚園と公立小学校の連携は、
いまだに十分ではないのが実情だといえます。

原因の一つは、役所の縦割り行政でしょう。
文科省調査によると、公立幼稚園も私立幼稚園もある
市町村について幼稚園行政の所管部署を見ると、
「公立・私立とも教育委員会」が31.5%、
「公立は教育委員会、私立は首長部局」が16.0%などですが、
私立幼稚園への対応窓口がない等の市町村も43.1%に上っています。
多くの市町村は就園奨励費の補助金業務でしか
私立幼稚園と関わっていないようです。
一方、私立幼稚園側にも、学区がないので
小学校と連携しづらいうえに、行政から干渉されたくない
という姿勢も一部にあります。
しかし、ほとんどの園児が公立小学校に入学することを考えれば、
私立幼稚園と公立小学校との連携を
早急に推進すべきでしょう。
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