
YOMIURI ONLINE様
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◆赤字運営広がり阻む
病気になった子供を預かり、看護師や保育士が世話をする病院併設型の
「病児保育所」が県内で今年度、新たに生駒、桜井両市でオープンした。
すでにある奈良、橿原両市の施設では年間利用者が
約200人に上り、「子供は急に病気になる。
安心して預けられるので本当に助かる」と感謝する声が寄せられている。
ただ、県内の施設の数は4か所と全国で最も少ない水準で、
運営も既存の2施設はいずれも赤字と、課題は多いようだ。
(守川雄一郎)
「約2年の準備を経て、この日を迎えた。
「約2年の準備を経て、この日を迎えた。
ただ、極めて難しい仕事。
油断すると、あっという間になくなってしまうのでは、と危惧する」
10日、桜井市の済生会中和病院で開かれた
10日、桜井市の済生会中和病院で開かれた
病児保育所「さくらんぼ」の開所式。
運営責任者の柴田優・小児科部長は出席した約40人にこう語りかけた。
病児保育所は同病院の小児病棟に併設され、
病児保育所は同病院の小児病棟に併設され、
保育士2人、医師3人、看護師14人が多い場合で
1日3人の病児(10歳未満)を保育する。
保育ルームは33平方メートル。
絵本や人形があり、感染症対策の仕切りも備えている。
一方、態勢を整えるためには相応の運営費がかかる。
一方、態勢を整えるためには相応の運営費がかかる。
全国の多くの病児保育所が同じ問題を抱えている。
1日の利用料は2000円。
1日の利用料は2000円。
市と県からあわせて最大728万円の補助金が支給されるが、
初年度は「赤字の見通し」という。
柴田部長は「病児保育所は、
柴田部長は「病児保育所は、
働く女性らの子育て支援には欠かせない施設。
どうすれば息長く運営できるのか考えたい。
ここからが正念場」と力を込める。
◇
奈良市の市立奈良病院に昨年4月に開所した「いちご保育園」。
◇
奈良市の市立奈良病院に昨年4月に開所した「いちご保育園」。
12年度は0~10歳の231人が利用した。
今年度も多い日は5人の定員がすぐに埋まる。
「子供の急な体調変化に対応してほしい」という母親らの声に、
今年度からは当日受け付けも始めた。多くの利用者が喜んでいる。
市によると、国と、市独自の補助金を合わせて、
市によると、国と、市独自の補助金を合わせて、
昨年度は830万円を支給した。
しかし、経営は赤字だ。谷美幸園長は
「風邪の流行期といった季節による利用のばらつきもあり、
運営には難しい点が多い。より多くの子供を預かれるようにしたいのだが」と話す。
熱を出した2歳の長女を預けていた市内の会社員の女性(36)は
熱を出した2歳の長女を預けていた市内の会社員の女性(36)は
「仕事先の都合もあり、急に休めないのですごく助かっている。
5歳の長男とあわせて、2か月に1回はお世話になる」と感謝する。
また、大阪市内の会社に勤務し、
また、大阪市内の会社に勤務し、
これから、9か月の長男を預けるつもりという女性(33)は
「大阪まで子供を連れて行けないので、
奈良市内に病児保育所があるのは安心」と話す一方で、
「遅刻や早退をしないと送り迎えが間に合わない。
これで延長保育があればうれしいのだが」と話す。
◇
県子育て支援課の担当者は県内の現状について、
◇
県子育て支援課の担当者は県内の現状について、
「病児保育施設は都市部だけではなく、
県内にバランスよくあるのが理想。
ただ、開設する市町村や病院の財政負担が大きいため、
なかなか広がらない」と明かす。
専門家は普及しない背景として、
専門家は普及しない背景として、
国の基準に合わせた設備と人員配置にコストがかかることや、
子供の容体が変わりやすく、
急なキャンセルが多いことなどを挙げている。
鈴木亘・学習院大教授(社会保障論)は、
全国病児保育協議会が加盟350施設を対象に
11年度実施した調査で74%が赤字経営だったことをふまえて
「特に地方では、市場原理に任せた経営は成り立ちにくい。
保険制度を創設し、県民全体で支え合う仕組みづくりが必要だ」
と指摘する。
Q 病児保育って何?どんなタイプがあるの?
A 働く女性や一人親世帯の子育て支援策として、
Q 病児保育って何?どんなタイプがあるの?
A 働く女性や一人親世帯の子育て支援策として、
1994年に国の補助金制度が開始されて広まった。
医療機関が設置する「病院併設型」のほか、
保育所が設ける「保育所併設型」、独立した「単独型」などがある。
Q どんな症状の時に預かってもらえるの?
A 「病児対応型」の施設では入院は必要ないが、
Q どんな症状の時に預かってもらえるの?
A 「病児対応型」の施設では入院は必要ないが、
風邪にかかったり、けがをして
安静にしなければならなかったりする子を受け入れる。
隔離保育スペースを持ち、風疹やインフルエンザなどの
感染型疾患にも可能な限り対応する。
このほか、回復途中の子供用の「病後児対応型」、
このほか、回復途中の子供用の「病後児対応型」、
保育中に発病した場合に保育園などで
緊急対応する「体調不良児対応型」がある。
Q 今後の展開は?
A 首都圏では2000年代以降、
Q 今後の展開は?
A 首都圏では2000年代以降、
NPO法人が運営する「自宅派遣型」の病児保育事業が
「個人の事情に応じて、きめ細かく対応してくれる」と人気を呼んでいる。
子育て世代の多い地方の都市部でも
サービスを望む声は多い。
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