体罰、子どもにどう影響? 恐怖や劣等感抱く大人に


東京新聞
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 教師による体罰が、県内でも明らかになっています。
宇都宮市の中学校ではバレーボールの練習試合でミスした生徒を、
男性教諭が「気合を入れる」として平手打ち。
同市の小学校でも男性教諭が、
長縄跳びを練習していた児童に「へたくそ」などと暴言を吐きました。
県南部の中学校でも女子生徒への体罰があり、
男性教諭が懲戒処分を受けました。
こうした指導は子どもの心にどう影響するのでしょう。
水島先生に聞きました。

    ◇

 暴力は虐待であり、犯罪です。
そして、何と言っても人の心に大きな傷を与えます。

 特にそれが教育現場という、明らかな力関係がある場の場合、
子どもは逃げることもできません。
また、教員という「本来正しいはずの人」から受けた暴力や暴言は、
子どもに「自分がダメな人間なのだ」という
メッセージを与えることになります。

 教育現場というのは、本来は安全であるはずの学びの場所です。
そして、どんな子もその子なりに頑張って練習しています。
そんなときに突然暴力や暴言を受けると、
子どもは大きな傷を負ってしまうのです。

 心の傷は、適切に癒やされないと、
それからの対人関係に影響を与えていきます。
人を「自分に厳しい評価を下してくる人」と見るようになりますので、
「怖い」と感じるようになります。
自分が人からどういう目で見られているかを
過剰に気にするようになり、
人の顔色をうかがうようになったりします。

 このような「自分はダメな人間だ」という感覚は、
大人になってからもずっと影響を残していきます。
社会そのものが怖くなってしまったり、
人との関係においても常に劣等感を持ち
相手の顔色をうかがうようになってしまったりするのです。
自尊心も下がってしまいますから、
「どうせ自分が何をやってもだめだろう」と思うようになります。

 教育の目的は、自分の中にしっかりとした軸を持てるようになること。
相手のご機嫌を伺うのではなく、
自分が設定した目標に向かって努力できる力、
失敗しても乗り越える力を身につけていくことが重要なのです。
これらの目標を一気に台無しにしてしまうのが、
教師による体罰だと言えます。

 精神科医・水島 広子
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