子ども用の銃の市場


WIRED
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アメリカで、5歳の子どもが銃を手に取り、妹に発砲する事件が起きた。
インターネットで入手できる、殺傷能力のある本物の武器だ。
アメリカやヨーロッパでは、銃の販売はどう行われているのだろうか。

5歳の子どもがクリケット社のライフルの引き金を引いて、妹を殺してしまった、
というケンタッキー州の事件のニュースに世界中が衝撃を受けた。
しかも、武器はネットで購入されたおもちゃだった。

「ニューヨーク・タイムズ」によると、世界の銃市場は年850億ドルの規模に上るという。
そこには何でもある。一般市民が手にする武器もあれば、子ども用のものもある。

クリケット・ライフル22口径は本物の武器で、少年でも持てるように設計されている。
Keystone Sporting Armsのウェブサイトで購入して、
地域の仲介人の住所に直接発送してもらえる。
そこでいくつか型通りのチェックを行えば商品を受け取ることができ、
25〜50ドルの付加税を加えて代金が決済される。
弾薬はというと、スーパーですぐに入手できてしまう。
このような状況では、子どもたちを銃から守ろうという
オバマ大統領の計画は簡単にはいかないだろう。

アメリカの法律では、銃の購入を希望する者は
年齢が18〜21歳以上(銃の種類と居住する州による)でなくてはならず、
認可を受けた販売業者を利用しなくてはならない。
従って未成年者は、クリケットのような銃にも、
22口径用の弾薬にも直接アクセスすることはできない。
しかし、空気銃は問題ない。

本当の問題は、親が自分の子どもに本物の銃を持たせることを
禁止する法律が存在しないことだ。
それは、全米ライフル協会のチュートリアル・ヴィデオを見れば完璧に理解できる。
彼らは非常に小さな子どもにも、銃の文化を普及させようとしている。

全米ライフル協会は若者向けプログラムの推進も行っていて、
若者たちにスポーツ射撃を推進している。
しかも若者に、家から自分の装備(弾薬、服、銃)を持ってくるように薦めている。
結果として多くの青少年が、家庭で銃に親しむようになる。
そして、それは決して空気銃ばかりではない。

しかも銃の周りでは、子ども向けアクセサリーの付随ビジネスが行われている。
例えば、「not a toy」(おもちゃではない)と書いてある
ピンク色のケースや、カラープラスチックの銃やミリタリー調のグッズなどだ。

「Journal of the American Medical Association(JAMA)」が報じているように、
最近9年でデンヴァーやオーロラ(残念な事件で有名になってしまった2つの都市だ)の
救急ユニットは、銃でけがをしたこどもを129人救護した。
残念ながら、両都市だけの出来事ではない。
公式データによると、アメリカでは2009年に、
何と2,811人もの未成年がピストルやライフルによって殺された。
彼らのうち800人は自殺しており、114人は偶発的な事故で死亡した。
これに対して、銃による計画的な殺人の犠牲者は1,855人となっている。

アメリカではどのように銃を購入するか

アメリカ合衆国憲法の修正条項第2条は、
市民が武器を所有する権利を保護している。
過去数十年で、条文をさまざまに解釈にすることによって、
いくつかの州では武器の購入や携帯が簡単になった
(簡単ではなくなった場合もある)。

しかし、アメリカで武器をオンラインで購入することはそれほど簡単ではない。
多くのオンラインマーケットが存在し、Impact GunsやGun Brokerなどが、
幅広い銃を取り揃えている。
しかし販売者と購入者の間には、常に地域の仲介人がいる。
ライセンスをもつ販売人で、前科についてチェックを行い、
購入者の負担で届け出を行って、直接武器を引き渡すことが認められている。

逆説的だが、北米の成人にとっては、
インターネットの外で銃を購入する方がずっと簡単だ。
テキサスやアリゾナのような州では、
しばしば銃のイヴェントや販売市が開催されていて、
大きな問題なしに銃を購入することができる。

ウェブが使われるのは、主に潜在的な売り手を見つけるためだ。
Silk Roadのような違法マーケットではなく、Armlistsのような合法プラットフォームの話だ。
これはアメリカのサイトで、ピストルやライフルや弾薬の
販売のために、広告を出すことができる。
登録は何も必要なく、購入者と販売者はメールや電話を通じて、
問題なく個人的にコンタクトを取ることができる。
これは武器のロングテールとでもいうべきもので、
仲介者なしの直接交換を促進している。

「Forbes」によると、銃製造メーカーの市場は、
年約120億ドルにも上るにもかかわらず、
イノヴェイションについていくのに苦労している。
しかし、ピストルの販売は最近5年で成長していて、
2012年には15億ドルに達している。
購入の一部はオンラインで行われていて、無視できる数字ではない。
1999年から現在までに、GunBrokerは
何と20億ドルもの武器を販売したはずだ。
反対に、グーグル、イーベイ、アマゾンは、「Businessweek」が説明しているように、
12年に自社ストアから武器の広告を廃止した。

ヨーロッパでは?

ヨーロッパにおける銃の所有は、アメリカよりも厳しく規制されている。
実際、Gun Policyがまとめた情報は、
オンラインでの武器の直接販売を禁止するシステムが
より組織されていることを示している。
認可を受けたピストル・ライフル販売業者は、
指令91/477/EECの規定に従わねばならない。
これはすべての銃について製造番号、購入者、国境を越える発送や輸送について、
20年間記録を保持することを規定している。

ピストルを購入するには、成人していて、
各国の法律に基づいて銃携帯許可を所有していなければならない。
オンライン購入や個人間の取り引きのような代わりの方法は存在しない。
当然のことながら、違法な取り引きを除けばだが……。
ただ法規は厳しいけれど、ヨーロッパの人々の間の銃の所持は、
広まっていないわけではない。
世界ランキングで、スイスとフィンランドは、
アメリカとイエメンに次ぐ第3位と4位で、
住人100人あたり約45丁の銃がある。
これに対してイタリアでは、約700万丁の銃が市民によって所有されていて、
住人100人あたり12丁となる。

イタリアでは、規制は非常に厳しい。
それでも、製造番号を消した違法の銃が購入できないわけではない
(先日、首相府のあるパラッツォ・キージの前で
ルイージ・プレイーティが使用したものもそうだった)。
イタリアの場合、インターネットで状況が大きく変わったわけではない。
さまざまな防止措置を、国内で行う必要がある。

武器産業のロビイストたちがほかの業種同様に
宣伝活動を行っているアメリカの状況は異なる。
アメリカには銃の使用を減らすための新しい戦略が存在するものの、
それぞれの州の取り組みが、例えば4月2日に国際連合の総会で
承認された武器貿易条約のような、
国際的な文書で同じ効果をもつかどうかまだはっきりしない。
8億7,500丁の銃が世界に出回っていることを考えれば、
冗談では済まないのだが。
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