幼稚園・保育所の先生も大変 公立は「正規化」、私立は「待遇改善」を望む声 渡辺敦司


msn産経ニュース
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幼稚園や保育所は、子どもの健やかな育ちを保障するとともに、
小学校以降の学びへとスムーズにつなげるうえでも
重要な意義を持っていることは言うまでもありません。
政府も保育所の待機児童問題をきっかけに、
子ども・子育て支援に力を入れようとしています。
しかし現状では、さまざまな問題が山積していることも確かです。

ベネッセ次世代育成研究所が実施した
「第2回 幼児教育・保育についての基本調査」(2012<平成24>年実施)では、
国公立幼稚園の保育者のうち47.1%と
ほぼ2人に1人が非正規雇用であることが明らかになりました。
第1回幼稚園調査(2007<平成19>年実施)では
調査していなかったため比較はできませんが、
自治体の多くでは近年、財政難から人件費の削減を進めており、
急速に非正規化が進んだものとみられます。
公営保育所では54.2%で、
第1回保育所調査(2008<平成20>年実施)から0.5ポイント増と、
やはり非正規の保育者に依存している構造は変わりません。

これに対して私立幼稚園の非正規雇用の割合は14.9%にとどまり、
私営保育所でも40.2%と公営に比べれば低くなっています。
では私立・私営のほうが条件に恵まれているかというと、そうとも言えません。
保育者の資質向上のために必要なことを尋ねると、
全体で最も多かった「保育者の給与面での待遇改善」(71.8%)を挙げたのは、
私立幼稚園で77.2%、私営保育所では83.4%にも上りました。
関係者の間では、私立・私営では
給与を安く抑えなければ経営が成り立たないという
構造的な問題があると指摘されています。

一方で保育ニーズの増大に伴って、
延長保育や幼稚園の預かり保育など、
保育の長時間化も求められています。
それに対応するためには、非正規の保育者が増えることも
一概には否定できません。
ただ、同調査の自由記述を見ると、
公私・幼保を問わず「研修や会議の時間がほとんど取れない」
「時間や心のゆとりがない」という嘆きが多く出されています。
子どもや家庭環境などの変化に伴って
保育者に求められる役割も多様化・複雑化しているのに、
資質や能力を向上させることもままならないという
悪循環に陥っているのが現状なのです。

与野党協議の曲折を経て2012(平成24)年8月に
ようやく法律制定にこぎつけた「子ども・子育て支援新制度」では、
保育の量はもとより質を充実させることも目指しています。
そこでは市町村が住民のニーズを把握し、
それに対応するため幼稚園や保育所はもとより、
両者の機能を併せ持った「認定こども園」など、
多様な機関を整備するための事業計画を立案することになっています。
財源としては2014(平成26)年4月にも予定される消費増税などで
1兆円の増額を見込んでおり、なかなか大変な構想です。
しかし次世代を担う子どもたちの成長を保障し、
質の高い保育環境を整備することは、
個々の家庭を支援することにとどまらず、
社会全体で真剣に考えなければならない
課題であることは間違いありません。
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