発達著しい0~3歳児に演劇体験を 健やかな成長を促す


msn産経ニュース
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 0歳から演劇体験を-。
子供向けの演劇は幼稚園児や小学生以上が一般的だが、
0~3歳児をターゲットとする画期的な取り組みが注目を集めている。
心と脳の発達が著しい乳児期に舞台芸術に触れ、
健やかな成長を促すのが狙いだ。(横山由紀子)

「ご機嫌でした」

 兵庫県尼崎市の県立尼崎青少年創造劇場「ピッコロシアター」。
今月23日、0~3歳児対象の演劇体験「シアタースタート」が行われていた。

 集まったのは、生後1カ月の赤ちゃんら親子連れ約200人。
京都を拠点に活動する、つげくわえさんの
人形劇やワークショップを体験した。

 薄暗い通常の舞台とは違い、明るい照明に包まれたホール。
そこへ、優しい音楽とともに「オハヨー、オハヨー」と
あいさつしながら男の子の人形が登場すると、客席の視線が舞台に集中。
「チュー、チュー」「ニャー、ニャー」。
おどけた声色のネコやネズミに赤ちゃんたちから笑い声が上がった。
人形劇の後は、親子でタオルと輪ゴムを使って
動物の人形を作るワークショップも行われた。

 9カ月の次男、英大ちゃんを連れてやってきた
浦上貴美子さん(36)は「4歳の長男と一緒に
子供向けのミュージカルに行くと、すぐ寝てしまうのに、
今日は人形を指差したりしてご機嫌でした。
明るい照明に、音量を抑えた音楽や分かりやすいせりふなど、
赤ちゃん向けによく考えられた舞台で、
ぜひ、また親子で参加したい」と話した。

共感性や社会性

 「シアタースタート」は平成19年、
特定非営利活動法人「子ども文化ステーション」(さいたま市北区)の
代表理事、武藤定明さんが
「脳と心の発達が著しい0~3歳の乳児にこそ、
本物の舞台芸術を届けて情緒豊かな成長を促したい」
との思いから始められた。

 人形劇の舞台鑑賞、人形や楽器を作って遊ぶ
ワークショップを組み合わせるスタイル。
その後、東京や三重、広島など全国でも行うようになった。

 文教大学教育学部の井上清子教授(精神医学)は
「舞台を通して、赤ちゃんや親、出演者らが
同じものに注意を向け合う共有体験をすることは、
現代社会の中で必要な共感性や社会性の発達と深く関わると思う」。

 尼崎市のピッコロシアターでは、
埼玉の取り組みを参考に今年初めて企画。
参加者を募集すると、初日に50組の定員に達するほどの人気で、
午後の公演を追加企画した。
制作担当の田房加代さんは「お母さんたちのニーズを肌で感じた。
今後も研究を重ねてよりよい公演を続けていきたい」と話していた。
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