保育所の待機児童問題 仙台市、「横浜方式」に関心?

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 2010年に保育所の待機児童が全国ワーストを記録した横浜市は
4月、待機児童ゼロを達成した。
08年に全国ワーストだった仙台市はいまだ待機児童を解消できていない。
両市の違いは何か。(報道部・土屋聡史)

 高架下に笑い声が響く。
4月に開園した横浜市南区の「京急キッズランド黄金町保育園」。
京浜急行電鉄の子会社が市の要請を受け、自社の未利用地に整備した。
 需要が高い0~2歳児はすぐに定員27人が埋まった。
0歳と3歳の預け先を認可外から移した女性会社員(36)は
「自宅に近い上、認可なので利用料が格安。働く母親は喜んでいる」と話す。
 横浜市は10年4月、待機児童が1552人と全国最多となった。
林文子市長が旗を振り、13年4月までに認可保育所を144カ所増やし、
約1万人の定員を積み増した。
 予算の重点配分と企業の参入を促すのが「横浜方式」の特色だ。
認可保育所580カ所のうち、26%の152施設は株式会社の運営だ。
 市は積極的に企業を回って参入に意欲的なところを探し、
企業と土地所有者とをマッチングして保育所を着実に増やした。
 新設補助金など関連予算は3年間で計2249億円。
昨年度は過去最大となる一般会計予算の5.9%に当たる約834億円を投入した。
 仙台市はどうか。待機児童が740人で全国ワーストになった08年、
保育所緊急整備計画を策定。
12年4月までに受け入れ先を2300人分確保し、待機児童をゼロにするはずだった。
09年に初当選した奥山恵美子市長も公約に掲げた。
 その後、保育需要が急激に増加。
ことし4月までに3045人分を増やしたが、
東日本大震災の他の被災地から子育て世代が移り住んだ影響もあり、
待機児童は533人と5年ぶりに増えた。
 11年度一般会計に占める関連予算は2.6%。
企業運営の保育所は9カ所(7%)にとどまる。
 ただ、横浜では保育所を一気に増やした反動も強い。
4月に開所した有限会社運営の認可保育所の入所者は15人(6月1日現在)。
定員40人を下回り、赤字経営だ。
 園長(45)は「市の整備費補助があるので思い切って建てたが…。
横浜方式が礼賛されると複雑だ」と言う。
市全体の欠員率は4.2%と、仙台市の2倍以上だ。
 東北大大学院の本郷一夫教授(発達心理学)は
「定員割れが増えると保育所の撤退リスクも高まり、
安定的な保育環境を維持できなくなる恐れがある」と指摘する。
 同じ目標を掲げ、結果が分かれた両市。
東北福祉大の岩渕勝好教授(社会保障)は
「認可保育所の増設はトップのやる気次第。
定員割れや『新設すると保育需要を掘り起こしてきりがない』という主張は言い訳だ。
林市長は(競争による定員割れを嫌う)
既存保育所に遠慮せず改革を断行した」と評価する。
 奥山市長は迫る仙台市長選(7月28日告示、8月11日投票)に
再選を目指して立候補する意思を表明している。
 当初は「巨額予算を一つの分野に投入するやり方がどこまで通用するのか」
と述べていたが、今月18日の市議会では
「保育基盤の量的拡充に向け、早急に計画を練りたい」と積極姿勢を見せた。

 [待機児童]
公的資金補助が手厚い「認可保育所」への入所を希望しているが、
定員超過などで入所できない未就学児を指す。
2012年4月時点の総数は全国で2万4825人。
認可保育所に優先的に入れるかどうかは、
保護者の就労時間や疾病の有無などを各自治体が点数化して決める。
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