児童ポルノ規制 しずかちゃんの入浴シーンは……基準不明確、渦巻く異論

ITメディアニュース
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 しずかちゃんの入浴シーンは○か×か-。
自民、公明、日本維新の会の3党が今国会に提出した「児童ポルノ禁止法改正案」は、
「児童の保護」か「表現の自由」かという論争のみならず、
人気アニメ「ドラえもん」を規制に巻き込むかどうかという話題も提供している。

 児童ポルノ禁止法は、正式名称が
「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」で、
平成11年11月に施行された。

 3党提出の改正案は、被写体となった18歳未満の「児童」の保護と
権利の擁護を目的に児童ポルノを厳しく取り締まる
国際的動向を踏まえたものとされる。

 まず、子供のわいせつな写真や画像など児童ポルノの「単純所持」を禁止し、
「1年以下の懲役、または100万円以下の罰金」を設けた。
先進国で単純所持を禁止していない国は少数である事情が
罰則規定を後押ししたといえる。

 もう一つの注目点は、検討規定としてマンガやアニメと
児童の権利を侵害する行為(わいせつ行為など)との関連性についての
「調査研究」が盛り込まれた。

 これに対し、罰則適用の前提を「自己の性的好奇心を満たす目的」
としていることについて、定義や基準があいまいだとの指摘がある。

 反対派はさらに、「調査研究」について「施行後3年後に検討」の上、
「その結果に基づく必要な措置」とあることについて、
「措置」が新たな規制を念頭に置いていると警戒する。

 ちなみに、「ドラえもん」で登場するしずかちゃんの入浴シーンは、
「しずかちゃん」が架空の人物などの理由で、
改正案が施行されても当面は規制対象にはならない。
しかし、その後の「措置」の内容次第では…ともいえそうだ。

 「日本アニメーター・演出協会」の理事会は
「アニメーションや漫画などの表現の自由に対し重大な萎縮効果を及ぼし、
アニメーション文化衰退のおそれが極めて高い」との反対声明を発表した。
映画や映像産業関係者で組織する「映画演劇労働組合連合会」(映演労連)も
「被害児童が実在しない『漫画・アニメ・コンピューター映像』の世界に規制を及ぼす」
との声明を出した。

 これに対し、改正案の提出を主導した自民党の高市早苗政調会長は、
「調査研究」への批判に対し「すぐにアニメなどに規制がかかる趣旨ではない。
あくまで調査研究だ」と説明する。

 改正案への異論は、自民党内にもある。

 4日の党法務部会では「措置」への懸念のほか、
「『クール・ジャパン』という日本の戦略がある中で、
アニメやマンガ業界を萎縮させる効果もあるのでは」
と安倍政権の目玉政策への影響を指摘する声が上がった。

 改正案の今国会中の成立は困難にあるが、
論争は今後も永田町でくすぶり続けそうだ。(山本雄史)
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