子どもに声掛け 児童ポルノ単純所持 規制条例来月施行 運用に注目

東京新聞
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 「おもちゃをあげるからおいで」。
甘い言葉やうそで子どもを惑わす、こんな声掛けが七月から県の新条例で規制される。
旧今市市で二〇〇五年に起きた女児連れ去り事件などが背景にあるが、
条例案の審議過程では「必要な声掛けも萎縮する」などの反対意見もあった。
児童ポルノの所持も厳しくなる。どう運用されるか注目される。(内田淳二)

 条例は一日施行の「子どもを犯罪の被害から守る条例」。
同様の条例は奈良、京都、大阪にあるが、首都圏では初めて。
対象となる「子ども」は十三歳未満で、次の三点に網を掛ける。
(1)声掛けで不安を与える行為(2)言い掛かりやつきまといなどの威圧行為
(3)児童ポルノの所持(漫画やアニメは除く)

 声掛けは「下着を売って」といった要求も対象。
子どもの事件は、声掛けから巻き込まれるケースが多いといい、
未然に被害を防ぐのが狙いだ。

 威圧行為は、いたずらの注意といった「正当な理由」があれば対象外となる。
児童ポルノは、提供目的の所持を禁じた「児童買春・ポルノ禁止法」の対象になっていない、
個人的な「単純所持」を規制。県公安委員会が廃棄命令を出す。

 これら三点のうち威圧行為と、ポルノの廃棄命令に従わない場合は
「三十万円以下の罰金」の罰則がある。

 ただ、条例に対しては慎重な声もあった。

 県弁護士会は三月、「声掛けは地域の連帯感を高めるが、
誤解を恐れ萎縮してしまう」
「ポルノの定義が曖昧」などとする意見書を提出。
県警が県民から募った意見でも、同様の指摘があった。

 単純所持に関しては、国政でも二十六日閉会した通常国会に、
禁止を盛り込んだ同法改正案が提出されたが、批判も出ていた。

 県弁護士会子どもの権利委員長の近藤峰明弁護士は、
パソコンの遠隔操作による誤認逮捕事件などを例に
「諸外国と比べ、日本はどんどん逮捕して身柄拘束し、自白を導くケースが目立つ。
『武器』の捜査権はむやみに与えるべきではない。
すべては運用の仕方にかかっている」と訴える。

 県警も、慎重に対応する姿勢を強調する。
古川芳巳生活安全部長は、先行する自治体でも支障は出ていないと説明し、
適用に当たっては「周囲の状況をみて個々に判断する」との考えを示している。
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