センター試験「廃止」は本当か 渡辺敦司

msn産経ニュース
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「センター試験廃止へ」……。一部の新聞が報道して以来、大きな話題となりました。
ただ、後を追った新聞によっては「見直し」「廃止検討」
「(新しいテストと)統合」など、若干ニュアンスが違うようです。
ところで、こうした報道を世間では唐突だと受け止めた向きが多かったようですが、
当サイトの読者のかたなら、大学入試に「大改革」が迫られていたこと、
大学入試センター試験も含めて現行入試の在り方が問われていたことは、ご存じだと思います。
そのうえで、本当にセンター試験が廃止される可能性はあるのでしょうか。

結論から言えば、現段階で正式に決まったものは何もありません。
そもそも最初の報道でも「文部科学省は……検討を始めた」としていました。
同日に開催された政府の教育再生実行会議(外部のPDFにリンク)では
「高大接続・大学入試の在り方に関する討議」が始まったのですが、
大学入試センター試験の存廃に関する具体的な提案があったわけではありません。

ただ、会合に出席した安西祐一郎・中央教育審議会副会長
(外部のPDFにリンク)が「多様な大学入学者選抜の仕組みをつくるべき」
「大学・学部などの目指す目標や機能などにより
入学者選抜の方法も違ってしかるべき」だとの考えを示していました。
具体案は別として、大学入試に抜本的な改革が必要だという
認識であることは間違いありません。

安倍内閣が設置した教育再生実行会議の前から、
常設の文部科学相の諮問機関である中教審が大学入試の改革を検討していたことは、
これまでの記事で紹介してきた通りです。
では、その中教審はどうなっていたかというと、
大学入試の問題などを話し合うため2012(平成24)年9月に設置された
「高大接続特別部会」では、あまり議論が進んでいないのが現状です。
2013(同25)年5月の会合で文科省事務局から提案された
「審議の状況」に対しても委員から異論が出されており、
必ずしも一致したものではありません。

これに対して、同じ中教審でも同部会より早く2011(平成23)年11月に発足した
「高等学校教育部会」では13(同25)年1月に
「審議の経過(外部のPDFにリンク)」をまとめており、
この中で、希望参加型の「高等学校学習到達度テスト(仮称)」を
設けることが提言されています。
この部分に関しては大きな異論は出ていません。
もっとも、あくまで高校での生徒一人ひとりの
学習の達成度を測るための仕組みとして提案したものであり、
例示として就職や推薦・AO入試での学力証明にも使えるとしているものの、
大学入試の一環と位置づけたわけではありません。

一方、政府の実行会議とは別に、
自民党内の検討組織である「教育再生実行本部」も
大学入試の抜本改革策として、
「高校在学中に複数回挑戦できる達成度テストの創設」を
提言(外部のPDFにリンク)しています。
下村博文文部科学相は会議終了後の記者会見で、
「センター試験との二重負担になることは避けるべきではないかという議論が
(省内で)あったことは事実。
9月くらいをめどに(結論を出したい)と考えている」と述べています。
ここからは、現在行われているセンター試験を
新しい「到達度テスト」に衣替えして、高校や高校生のために役立てるだけでなく、
大学入試にも活用できるようにしたい……という考えが読み取れます。

一部報道のように「5年後」に新しい入試が導入されるかどうかは、
現時点では定かではありませんが、
センター試験を中心とする現行の大学入試体制が
いつまでも続くとは限らないことだけは確かなようです。
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