<子どもと育つ>1、2歳の英語教室 人気 「日本語の基盤先決」

東京新聞
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 幼児向けの英語教室に人気が集まっている。
低学年から英語を採り入れる小学校が増えていて、
その準備や、グローバル化が進む中、
「将来、英語で苦労しないように」という親心も背景にあるようだ。
だが、子どもは発音やリスニングでの習得力が高いとはいえ、
日本語もおぼつかない時期の英語教育には、意見もさまざまだ。(砂本紅年)

 「グッジョブ!」。東京都目黒区の英会話教室「イーオン」自由が丘東急ビル校。
一、二歳の三人を前に、英語能力テスト(TOEIC)満点の
バイリンガル講師宮本阿美菜さん(26)が、英語で話し掛けた。
子どもたちは母親と一緒に、塗り絵などの教材を使ったり、歌を歌ったり。
遊び感覚で英語を楽しんでいた。

 全国展開する同教室の全体の入会者数はここ数年横ばいで変化がないが、
一、二歳児のクラスだけ伸びが突出している。
特に関東地方では、昨年の入会者数は前年比で34%増。
全国的にも二〇一〇年以降、年々一割ずつ伸びていて、
今年に入って、さらにペースが上がっているという。

 二歳の娘を通わせている東京都中央区の母親(41)は
「これからの世の中、英語ができないと就職が難しくなるのでは」。
外資系金融機関で働いた経験があるが、英語を流ちょうに話せず、
職場で疎外感があったという。「言語を習得するには早い方がいい」

 目黒区の母親(35)も「洋服のバイヤーだったので毎月のように米国に行っていた。
子どもには楽しみながら英語を身に付けてほしい」と、一歳の娘を通わせる。
講師の宮本さんは「ママたちがみんな熱心で、関心の高さを実感する」と話す。

 幼児への英語教育熱には、一一年度から全面実施された小学校の学習指導要領で、
高学年の「外国語活動」が必修化されたことも影響している。
低学年から英語活動を導入する小学校も少なくなく、
英語の時間を採り入れる幼稚園や保育園も増えた。

 政府の教育再生実行会議は今年五月下旬、
小学校高学年の英語を正式な「教科」にすることや、
中、低学年からの英語学習を提言。
今後、小学校での英語教育がさらに進む可能性がある。

 英語熱には「みんなやっているし、小学校で出遅れないように」という親の焦りもあるようだ。

 ただ、早期の英語教育に対する考え方は、さまざまだ。
情報サイト「オールアバウト」で、幼児英語教育について情報提供している
清水万里子さん(48)は「子どもの時は、音や英語センスを学ぶ時期」と肯定派。
「英語に接する時間の長さで決まる。
英会話教室なら、一人で学べる四歳以降がいい」と話す。
十二歳まで継続的に英語に触れる環境を整えることが大事という。

 明海大の大津由紀雄教授(認知科学)は批判的。
「日本人として育てながら、英語を身に付けてほしいと考えるなら、
日本語の基盤がないうちに習わせても、子どもを混乱させるだけ」と話す。
「発音が立派でも、文章の形成能力がないと話せないし理解できない。
本当の意味での外国語習得ができないまま、
言葉の根無し草になるリスクがある」と話している。
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