子ども向け冊子(県作成)後押し 養護関係施設での虐待発見 

中日新聞
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県内の2件、本人が連絡

 県が昨年作った子ども向け冊子「子どもの権利ノート」がきっかけで、
二〇一二年度に乳児院や児童養護施設など
社会的養護関係施設の保育士による身体的虐待が二件あったことが分かった。
専門家は、虐待を受けている子どもがほかにもいる可能性を示唆し、
「虐待はいけないという啓発をもっと進めるべきだ」と訴えている。(石井真暁)

 県が昨年三月に作成した冊子は、家庭での養育が難しい児童のための
「児童養護施設」と、両親などの代わりに別の保護者に養育を委託する「里親委託」、
自立に向け生活指導を行う「児童自立支援施設」で配る三種類がある。

 内容は、子どもの権利や施設での生活、職員による体罰や虐待の禁止などを解説。
「困ったときは、一人で悩まないで」と児童相談所の電話番号を掲載し、
切手がなくても県に手紙を届けられる封筒も添えてある。

 二件はいずれも、虐待を受けた小学生以上で十八歳未満の
児童本人が冊子を見て連絡した。
うち一件は八月に県へ手紙が届き、もう一件は九月に児童相談所に電話があった。

 県はその後、施設への立ち入り調査を実施。
二件とも保育士が児童の体をたたいていたが、児童にけがはなかったという。
県は本年度から、社会的養護関係施設の職員を対象に
研修会を開催するなどの対応に取り組んでいる。

 県が発表した一二年度の児童虐待の相談件数は二百八十三件あった。
専門家「ほかにも可能性 啓発を」

 NPO法人子どもの権利支援センターぱれっと(射水市)の理事長で、
真生会富山病院の明橋大二心療内科部長は、
「虐待を受けているのに我慢している子どもはほかにもいる可能性がある」と指摘。
「施設の子どもは親からも体罰を受け、虐待に慣れていることが多い。
『自分は大切にされるべき、掛け替えのない存在なんだ』という
子どもたちの自己肯定感を育て、虐待はいけないと、
子どもや職員にもっと伝える取り組みが必要だ」と強調している。
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