絵本の「かーくん」完成 児童養護施設勤務経験を基に、子どもたちへの思い描く

東京新聞
------------------------------------------------------------------------------------------------
 川崎市の児童養護施設の子どもらをアートで支援する
一般社団法人「ソーシャル・アーティスト・ネットワーク」(S・A・N、東京)が、
同施設の子どもたちの心情を巧みに表現した絵本「かーくん」の販売を始める。
「施設に関心を持ってもらうきっかけになれば」と関係者。
一冊千三百円で千部作製。売上金は施設の子どもたちのために使う。 (平木友見子)

 作者は、横浜市の保育士谷浩子さん(43)。
県内の児童養護施設の幼児寮での勤務経験を基にした作品で、
S・A・N主催の「第一回ソーシャルアート絵本コンペティション」で最優秀賞に輝いた。

 谷さんは、施設で働く前は幼稚園教諭だった。
生活が不安定なためなのか、表現が下手な施設の子どもたちに
「環境が違うだけでこんなに違うのかと衝撃を受けた」と明かす。
先生に水をかけ、面会に来た父親にあかんべえをするやんちゃな主人公は、
実際に施設で見てきた子どもたちの姿という。

 題名になった「かーくん」も、施設で出会った子ども。
親元へ帰れると大喜びしてお別れしたが、
その後、母親の内縁の夫に虐待され、亡くなった。

 「ショックで、だけど何もできなくて…。
今度は自分の子どもに生まれておいで、と祈った」と谷さんは振り返る。
雑誌でコンペを知って、「かーくん」や施設の子どもたちへの思いがよみがえり、
「子どもは、みんなの大切な宝物なんだよ」のメッセージを込めて書き上げたという。

 「施設で働いていたからこそ伝えられる思いの詰まった作品で、
谷さん以外に最優秀賞は思い付かなかった」と
S・A・N文芸担当の加藤孝子さん(44)。
優しいタッチの絵と生き生きした文章に「伝える力がある」と評価する。

 十月五日に川崎市麻生区の「ミュージックシティ百合ケ丘」で開かれる
S・A・N主催の「ソーシャル・アート・フェスタ」でも販売される。
問い合わせは、S・A・N=電03(6740)1650=へ。
------------------------------------------------------------------------------------------------