「小規模保育」質低下の懸念 無資格者半数で認可も

東京新聞
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 待機児童対策として国が二年後に始める、新たな保育制度「小規模保育」について、
そこで働く保育士の国家資格者の割合は「半分でよい」とする案が検討されている。
新制度は、認可外保育所を国の制度に引き込んで保育環境の底上げをする目的もあるが、
「半分」は、東京都認証保育所など自治体独自の制度よりも低い基準。
保育関係者から「質の低下につながる」と反対の声が出ている。 (柏崎智子)

 小規模保育は、ゼロ~二歳児が対象の定員六~十九人の施設で、
ビル一室でも開業できるイメージ。
国は、整備に時間がかかる認可保育所より待機児童解消に即効性が高いと期待する。
都の認証保育所やスマート保育、横浜市保育室など自治体独自の認可外施設も、
多くがこの枠組みに移行するとみられる。

 その質を左右する認可基準が、
有識者や保育関係者らを集めた国の「子ども・子育て会議」の部会で検討されている。
二十九日の会議で合意すれば、認可基準として全国の各自治体に提示される。

 事務局案は、小規模保育を(1)認可保育所の分園=A型
(2)個人で三人まで見る「家庭的保育者」が複数集まる施設=C型
(3)それ以外=B型-に分類。有資格者の割合は、A型が十割、B型は二分の一以上、
C型は一定の研修を受けた人でもよい-と提案した。
現行の認可保育所は、全員が有資格者であることが義務付けられている。

 多くの認可外保育所の移行が見込まれるのがB型。
「二分の一」の提案理由を事務局は「A型とC型の中間にした」と説明するが、
都認証保育所の「六割以上」、横浜市保育室の「三分の二以上」よりも低く、
移行で向上にはならない。

 会議では「多様な事業者が移行しやすい」と歓迎する委員もいるが、
「規制緩和につながる」「これまで、高い基準に合わせようと議論してきた。
移行措置を設けても、『十割』を目指すべきだ」と反対する意見も出た。

 ハードルを下げた背景には、待機児童対策を急激に進めるあまり
保育士確保が難しくなっている事情もある。
厚生労働省は二〇一七年度末には七万四千人が不足すると推計する。

 全国保育士会の上村初美(うえむらはつみ)会長は
「待機児童対策だけを見て、質の引き下げで
量を増やすことは誰も望んでいない」と指摘。
「保育士が国家資格になったのは、命を預かり、
養護と教育を行って人間の基礎をつくる専門性の高い仕事だから。
そこを理解してほしい」と話している。
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